少女を性虐待から守りたい!

「お前は誰だ!! 帰れ!!」

「お父さんが怒ることじゃない。怒りたいのは、娘さんのほうだと思いますよ」


 怒りに震える父親に対して、竹田さんは冷静だった。

「とにかく、娘さん妊娠しているから、堕ろさないと間に合わなくなります」

 実の父親から性虐待に遭い、妊娠6か月だった17歳の少女の自宅に乗り込むと、父親は竹田さんの靴を玄関の外に投げ捨て、殴りかかろうとする勢いで拒絶した。

「あなたを告発しようとしてるわけじゃない。でも次、娘さんに何かしたら警察に訴えます」

 竹田さんは彼女を救うことだけを考え、説得に臨んだ。

「少女から最初の連絡をもらったのはツイッターのダイレクトメッセージ。“交通費を払うので、カウンセリングに来てください”と。“未成年だからお金はとらないよ”と返信して事情を聞きました」

 母親が出ていった小学2年生のころから性的虐待が始まった。中学生になり、少女はそれがレイプだと初めて知った。そして妊娠─。

悩みを周囲に言えない少女たち、薬物依存に苦しむ人たちから相談の連絡が淳子さんのもとに多数届く
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【写真】大勢の人が集まった生前葬

 事情を知った竹田さんは、じっとしていられず自宅に乗り込んだ。

「父親に二度と手を出さないと約束させ、環境を変えることはできました。でも、堕胎の段取りを進めていた矢先、父娘ともにコロナに感染して、自宅で出産してしまいました。

 出ていった母親に連絡を取り、事情を伝えて、今は母親と2人で子どもを育てながら生活しています」


 一刻を争う事態だった。彼女を性虐待から救えたものの、「もっと早くSOSを受け取れていたら……」との思いが込み上げる。

「父親は小学校の教師で、“いい先生”と呼ばれていることを知って愕然としました。実の父親から性被害に遭った例は、報道されないだけで山ほどあります」

 ほかにも母親の彼氏にレイプされた少女から相談を受け、竹田さんが母親に手紙を書いて男と別れさせたこともある。

 性的虐待の相談は、今も数多く寄せられ、竹田さんはそのたび、怒りに震えている。

「私、魔女になりたいんですよ。こういう男たちのチンコを爆発させる薬が開発されればいいと本気で思う!」

 そう話す竹田さんにも、長い間、人に話せずにいた壮絶な過去があった─。