部屋から掻き出されたゴミの山
ゴミを処分する目的で自宅に火を放つとは前代未聞。冒頭とは別の目撃者が提供してくれた動画を確認すると、アパート裏手の窓ガラスを割って室内に入ろうとする消防隊員がゴミの山に行く手を阻まれていた。2本爪の熊手のような器具でゴミの詰まったビニール袋を掻き出し、消火活動にあたっていた。部屋からいくら掻き出しても、室外に放り投げても、ゴミが減る様子はなかった。
「消防隊員は火を消したあとも燃え残った大量のゴミを屋外に出し、くすぶっていないか確認していた。マスクをしていてもアパート近くでは煙のにおいがすごかったし、生ゴミを燃やしたような悪臭もあった。室内を焼却炉がわりにしたかったのかもしれないけど、結果的にゴミを片付けたのは消防隊だよ。ご苦労さまと言いたい」(近所の男性)
複数の周辺住民によると、部屋から掻き出されたゴミの山はアパート敷地内に積み上げられ、数日間は片付かなかった。ペットボトル飲料の空ボトルが目立ち、溶けて固まったとみられるビニール片や衣服の燃え残りがあったという。
「1部屋にあったとはとても信じられない量だった。室内で動けるスペースなんてほとんどなかったはず」(近所の女性)
部屋は洋室約6帖で風呂、トイレ付きの1K。単身者用の狭い間取りだからゴミに埋もれて生活していたようなものだ。近隣住民からは田原春容疑者についてこんな証言も。
「部屋のドアを開けているのを見たことがあり、暖簾のような目隠しの向こうに大量のゴミがあった。新聞とか雑誌なんかの束も見えたので火災前からゴミ屋敷だと気づいていた」(別の近所の女性)
「容疑者らしき男性が部屋の前に出て、とくに何をするでもなく敷地内に佇んでいるのを何度か見た。決まって部屋のドアは開いていた」(近隣の男性)
アパート前をよく通るという40代主婦はこう話す。
「ドアを開けていたのは部屋の換気だと思う。少し酸っぱいような臭いを感じたことがあるし、ずっと開けっぱなしにしているのが不自然だったから。臭いがひどくて眠れないレベルだったのではないか」
窓のカーテンは常に閉まっていた。
しかし、室外にゴミを積むようなことはなかったため、周辺住民の多くは火災前までゴミ屋敷と気付かなかった。