「女優のとよた真帆さんと付き合っていた1999年に、写真集を出したんですよ、『使者』っていう。撮影はとよたさんで、もうふたりのラブラブっぷりが赤裸々すぎて。でも、そういう無邪気というか開放的な部分も、壱成の魅力のひとつでしたから」
ふたりの往復書簡(壱成はポエム、とよたはエッセイ)といい、ベッドの上で全裸の壱成がタバコを吸い、その両足の間からとよたが撮影した旅先の写真といい、さながら「公開同衾」。令和の今からは想像できない自由があった。芸能人同士の恋愛やプライベート(なんなら陰毛も)丸出しがアート作品になる時代だったのだ。
そして2001年、壱成は劇団☆新感線の舞台『大江戸ロケット』に出演中、大麻取締法違反で逮捕される。途中降板となり、芸能活動は停止。
「驚きましたが、'90年代の壱成をずっと追いかけてきて、あのとき壱成が可愛かったのは事実であり、その思い出を捨てる必要はないと思いました。その後、結婚と離婚を繰り返したあたりで熱は冷めましたけどね。男としての格下げ感がハンパなかったから」
友人Sはトルコ植毛などで話題になっている壱成を見ても、今は何も感じないという。ただ、'90年代の輝いていた壱成を一生忘れない、と話す。若者の心を掴み、一世を風靡しただけに、あの頃の壱成は多くの人の目に、心に、焼きついている。
その後、芸能活動を再開したものの、女性がらみのスキャンダルで事務所から解雇された壱成。華やかなスポットライトを浴びることもないまま、「石田純一の息子」「谷原章介の嫁の元夫」「東尾理子の親戚」「すみれの異母兄」と、誰かの属性でしか語られなくなった。テレビ的な露出も激減し、騒動を起こさない限り注目されなくなった。
で、現在。「スターの見事なまでの凋落」と感じているのは40代以上だ。前科に醜聞の多さ、令和では使いにくい人材となった壱成。そこは芸能界の不文律や世間が許さず、突破できないのだろうと察する。
ただ、バイプレイヤーを目指すならば、植毛しなくても素のままの壱成で勝負すればいいのではないか? 若さや可愛らしさではない勝負の仕方もあるのでは? 壱成ならどんな役でもこなせるのでは? とも思う。
一度味わった華やかなポジションと自分の絶頂期に、うっすら未練や執着があるのだとしたら、方向転換も必要ではないかと。老婆心ながら。配信映画の主演作も予定しているようだし、今後の彼の俳優業をひそかに見守っていこうと思っている、元グルーピーの友人Sとともに。
吉田 潮(よしだ・うしお)
1972年生まれ、千葉県船橋市出身。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。『週刊フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『くさらないイケメン図鑑』(河出書房新社)、『産まないことは「逃げ」ですか?』『親の介護をしないとダメですか?』(KKベストセラーズ)などがある。