美容クリニックを利用するのは決して20代の若者とは限らないのだ。例えば、ある35歳の男性は朝にヒゲを剃っても夕方には青ヒゲが伸びてしまう体質に悩み、ヒゲの濃さを長年のコンプレックスにしていたという。そしてある日、娘さんが描いた“家族の似顔絵”を見ると、自分の口まわりに青ヒゲが描かれていたことに衝撃を受け、落胆。クリニックでのヒゲ脱毛を決意したそうだ。

「誤解のないように言っておくと、別にヒゲはあってもいいんです。ただ、伸びるのが早い方もいますし、濃い方はそもそも剃るのが大変なので肌もあれます。ならば、いっそのこと脱毛すればその負担はかなり減るし、ヒゲ剃りに使う時間も節約できます。清潔感や身だしなみといったことだけでなく、日々の利便性や時間短縮といった面からもいいことずくめということで、『脱毛』は男性の間でいまや一般化しつつあります」(稲見先生)

美容整形を受けて「心が楽になる」

 利便性でいえば、ワキガや多汗症による体臭を気にしてクリニックを訪れる人も多い。

「ワキガの方が施術を受けると確実にニオイが減り、生活は楽になります。あと、実際にはニオイがあまりしないのに、必要以上に気にして来院される方も多くいらっしゃいます。そういう方の場合、保険診療だと『あなたはワキガじゃないから手術をする必要はありません』と帰されてしまうことが多く、気持ちの部分までは向き合ってもらえないんですね。ただ、われわれのような自由診療だと、『そこまで強いニオイはしないし、ワキガじゃないかもしれないけど、そんなに気にされているなら治療をやってみますか?』と応えてあげられるんです。そうすると、ニオイはもともと強くなかったので治療効果はそこまでではないですが、患者さんはすごく満足されるんですね。ただ、自由診療で大事なのは何でもかんでも施術するのではなく、『治療をやりすぎるとこうなる可能性もありますよ』と、きちんと患者さんにお伝えすることです」(稲見先生)

 満足の理由は「美容クリニックの先生に太鼓判を押してもらったから、俺はもう大丈夫」と、心が楽になったからである。気持ちがアガると人は自己肯定感を保つことができる。脱毛やAGA、医療痩身の施術を受ければ、男性だって気持ちはアガる。体重が減って身体が軽くなると「じゃあ、運動しよう」という気になるし、やせて髪が増えればおしゃれはもっと楽しくなる。

「ただ単に髪が増えたり体重が減るだけじゃない、プラスアルファが非常に大きいんです。その取っ掛かりをつくってあげることは非常に重要で、自信も取り戻せます」(稲見先生)

 美容整形を希望する男性は成人だけでなく、10代の若年層にも増えている。「東京イセアクリニック」形成外科医の鈴木知佳先生に伺った。

「特に10代に人気の施術は大掛かりなものより、メスを使わず顔の一部を変えられるような『プチ整形』と呼ばれていた種類のものが多いです。代表的なのは、埋没法などの二重術、ヒアルロン酸注入による涙袋形成、小顔・輪郭の治療です。

 幼少期より悩み続けたコンプレックスから解放され、自分らしさを取り戻せるのであれば、美容整形はよいことだと思います。しかしながら未成年の場合、多感な時期で自分の意志が定まっていない方も多いです。カウンセリングでしっかりとお話をしたうえで適応があるかどうか、親御さんの意見も含めて判断することが大切だと思います」(鈴木先生)