キリンもSNSを用いたアクティブサポートのやり方を模索している最中だ。
「SNSはお客様のプライベート空間でもあります。お客様が大切にしている場所にこちらからノックなしで入っていくようなやりとりは、もちろん逆効果になることもありますし、内容も気軽になりすぎないよう、ダブルチェック体制で取り組んでいます。
また、弊社はお酒のアカウントも持っていますが、“一番搾りが飲みたい、どこで売ってるかな”というツイートを見つけても、その方々が未成年だったり授乳中の方ではないか、そういった確認をしたうえで、対応できるか判断しています」(キリン・渡辺さん)
より便利な窓口へと進化
SNS以外にも、ネット上で即時にメッセージのやりとりをできるチャット窓口や、人工知能を活用して自動でチャット対応を行う“チャットボット”を取り入れる企業も年々増加している。
「若い世代の方は電話よりもメッセージのやりとりのほうが楽だという方も増えています。弊社もチャットボットはすでに取り入れており、ちょうど電話とメールの中間のようなイメージでご利用いただけます。時間帯別のアクセスを分析すると、お昼休みなどの隙間時間や、通勤通学中かなという時間帯に活用いただくことが多いようです。
とはいえ、チャットボットでは対応が難しい内容も多く、有人のチャット問い合わせ対応も導入したいなと進めているところです」(キリン・渡辺さん)
ファンケルでは『Yahoo!知恵袋』という質問サイトに企業アカウントを作成し、ユーザーの質問に対して公式の回答を提供している。
「質問サイトでは、誰かの間違った情報がベストアンサーとして残ってしまうと、それを閲覧する人がどんどん増えてしまいます。特に、弊社の取り扱う化粧品や健康食品分野では、推奨されない使い方などの情報が流れてしまうとお客様が実害を被る可能性もありえます。
公式として回答できる質問に対して積極的に正しい回答を届けることも必要と考え、1年ほど前からYahoo!知恵袋のフォローを始めました」(ファンケル・大泉さん)
とはいえ、実際には他社商品との比較についての質問なども多く、企業として回答がしにくいものもある。
「実際には月に5~6件の回答ができるかなという状況ではあります。回答が蓄積され、累積の閲覧数は2万件ほどになってきており、担当者もやりがいを感じているようです」(ファンケル・大泉さん)
カスタマーサポートは、まさに企業と消費者をつなぐ直接の窓口だ。紋切り型のマニュアルでは対応できないからこそ、やりがいも大きい。
「会話を通して目の前のお客様に適切な情報を提供するということは、お客様相談室にしかできないと思っています。また、“おたくの商品を飲んで、亡き父との思い出を思い出したよ”なんて温かい感想を直接受けることができるのも、お客様相談室ならでは。
連絡しようかしまいか、迷う気持ちになる方もいらっしゃるかもしれませんが、小さなことでも本当にお気軽にご連絡くださいと伝えたいです」(キリン・渡辺さん)
(取材・文/吉信武)