水野美紀の「ここにいるよ〜」
5位の『奪い愛、冬』も役者の演技が話題になった作品のひとつだ。
婚約している光(倉科カナ)と康太(三浦翔平)カップルの前に光の元彼・信(大谷亮平)が現れ、心が揺らぎ始める光だったが、信にはすでに、妻・蘭(水野美紀)がいて……。とあらすじだけでもドロドロの展開が予想できる本作。
夫の不倫現場で「ここにいるよ~」とクローゼットから出てくる水野のホラー作品ばりの怪演や、康太の母(榊原郁恵)が息子可愛さに光に浴びせる嫌がらせなど、各話ごとに繰り広げられる登場人物たちの狂気に、
「女優さんの演技力が半端じゃなくて、見入った」(28歳・鹿児島県)
「演技がオーバーで面白かった」(31歳・神奈川県)
「行動やセリフがもはやコント並み」(38歳・東京都)
「ぶっ飛んでて笑えた」(43歳・東京都)
などと、およそ不倫ドラマの感想とは思えないコメントも。しかし、まさにそこに秘密があると木村さん。
「脚本はバラエティの構成作家が本業の鈴木おさむさん。80年代に『大映ドラマ』と呼ばれた作品の独特な演出や、昼ドラの過剰なセリフを参考にしながら、独自の世界観を作り上げたんです。特に『奪い愛』は笑える方向に舵を切っていました」
登場する役者と、演技・セリフのアンバランスさも面白さを加速させた。
「俳優さんからすると“本当に言うんですか?”というぐらい、オーバーで過激なセリフや表現が多かった。主演の三浦翔平さんで遊んでるのかと思うほど。しかも、視聴者も三浦くんに“何をやらせるんだ”“何を言わせるんだ”と楽しみにしている。SNSでバズらせるということを意識して作品を展開していましたね」(木村さん)
不倫ドラマも昭和から平成、令和にかけてトレンドが変化してきているようだ。
「どちらかと言えば視聴者が求めていることが変わってきた。どういう体験をドラマを通じて感じたいか。
『金妻』や『失楽園』、『昼顔』のような、ストーリーや人物の境遇を“自分に重ねて見る”ということがなくなり、『ホリデイラブ』や『奪い愛』のように純粋にエンタメとして消費している。面白ければ内容がリアルかどうかはどうでもいい、という変化もあったのでは」(木村さん)
拒否を示されやすい不倫ドラマだが、今後も変わらず作られ続けていくという。
「受け入れられ方は変わっていっても、途絶えることはないでしょう。定期的に話題に挙がるということは、一定のニーズが常にあるということ。今は憧れやドキドキ感よりも、面白かった内容をSNSで個人が気軽に情報発信したり、不倫した人を成敗したい、懲罰感情を満たしたい、というニーズに沿って作られる作品が多い印象ですね」(木村さん)
7位の『ギルティ〜この恋は罪ですか?〜』(日本テレビ系)で小池徹平が演じた不倫しても平然と嘘をつく夫や、8位『偽装不倫』(日本テレビ系)で谷原章介の演じた、視聴者に“妻が不倫しても仕方ない”と思わせるモラハラ夫のように、非難されて当然と言えるようなキャラを登場させるのは定番に。
「漫画の世界でも不倫もののニーズは非常に高い。WEBマンガを中心に、ドラマの原作となり得る漫画がすごく多いんです。小説なども含めそういった作品は世の中にゴロゴロしています。それらがドラマ化される、という流れはますます活発になっていくでしょう」(木村さん)
定期的にブームが訪れる不倫ドラマ。道ならぬ恋、現実では許されない背徳的な恋に憧れる女性たちをこれかも魅了していくだろう。