プロダクションの担当者は執拗に契約をすすめてきて、ビデオ出演のつもりはない美幸さんが断ろうとすると「うちはモデルプロダクションもやっていて、契約してくれたら優先的に仕事を回す」と持ち掛けられた。それなら、と美幸さんは「タレント契約書」にサインしてしまったという。

 だが、契約書の中には『性行為』とは書かれていないが『AV含む』と書かれていた。抵抗感を示すと「マネージャーさんからはこれは芸能界の仕事のひとつ。したくなければ断っていいと言われました。でも、契約書の最後のほうに、仕事を受けたらキャンセルできないとも書いてあったことに後から気づきました」

作品が販売されてからが地獄

 事務所からは「仕事をキャンセルできない」「宣材写真の撮影やプロモーションでお金をかけてきた」などと再三言われ「撮影しなきゃいけないんだ」と思い込んでしまった。そして事前の説明もないままにAVメーカーの作品出演の面接に連れていかれた。

「性的な行為のリストを渡され“できない”と回答するとマネージャーに怒られました」

 何社も回り、やりたくない、怒られる、の繰り返し。疲弊して、「早くこの場から逃れたい」という一心で最後の最後でいくつか性的な行為を了承してしまった。

「撮影の仕事が決まりましたがやりたくなくて断ると“キャンセルはしない”という契約だったのと、“親に連絡するから”と追い込まれました」

 身分証をコピーされていたため美幸さんは悩んだ。

「相談してくる女性は誰ひとりとして“被害に遭った”とは言わず、出演契約をした自分を責めています。“自分が契約してしまったから……”“親には迷惑かけられない”と誰にも相談できず抱え込んでしまい、撮影現場に行くんです」(ぱっぷす担当者)

 撮影現場で美幸さんが「出たくない」と説明すると、「仕事を差別している」「1本、2本出たくらいじゃ有名にならない、自意識過剰」などとも言われ心が揺らぎ、流されるように出演した─。

周囲の大人たちに説得され、意に反する契約や発言を強要されるケースも(写真はイメージ)
周囲の大人たちに説得され、意に反する契約や発言を強要されるケースも(写真はイメージ)
【写真】指原莉乃がイメージキャラクター、AV出演の強要を防止する啓発ポスター

「多くの相談者が言うのが、最初は抵抗しようとしてもある日を境に抵抗をあきらめてしまって言われるままに出演、と。撮影時は『無』でした、と語っています」(ぱっぷす担当者、以下同)

『グルーミング』と呼ばれる手口が根強いことも指摘する。

「プロダクションの人間に食事に連れていってもらったり、優しくしてもらうことで断れなくなっていく。親との関係を切り離すことに力を入れる業者もおり、本人に契約解除する意思を失わせ、未成年者取消権を使わせなくするケースもありました」

 撮影が終わり、販売が始まってからが『地獄』だという。

「“女優●●がやったこと”“自分ではない”と思い込み日常に戻ろうとする。ですが学校や地元でバレて、行き場を失い孤立してしまう。学校を中退したり、就職できなかったり。それなら、業界でいかに生きていくかを考えるしかない、と追い詰められてしまう。特に画像や動画が一度でも拡散されてしまうと名誉回復の有効な手段がない」