さて。その間垣親方は「間垣親方と撮影できるマス席」に座る観客との撮影会にも連日臨む。こちらも私、席を買うことが出来て、うれしくも撮影に参加できた(注・推し活に励んだわけです)。2人マス席(1人8000円)で、親方と撮影ができる! 自分のスマホを渡して、相撲協会の担当の方がパシャリと撮ってくれるのだからうれしい。
ちなみに白鵬だけでなく、「鶴竜親方からバラの花を手渡してもらって撮影会」なる、ファンなら倒れてしまいそうな企画も行われている。鶴竜にはバラが似合う。ちなみにこの撮影会付きの席はどちらも秒殺。一瞬で売り切れたそうだ。
食パン、お守り、マカロンを売る国技館はまるで夏フェス
なるほど、「コロナ時代の大相撲」では、現役を引退した親方たちも現役力士と同じぐらいに大活躍する。世代交代して人気力士が大挙して引退したのなら、それを放っておく手はないだろう。
親方たちが順番にレジに着いて接客対応してくれる、公式売店も大人気。公式グッズが飛ぶように売れていく。私も行く度に、なんやかやとついつい買ってしまい、「栃煌山から手渡された!」とか、いちいち興奮して大騒ぎしてしまうから、すっかり協会の思うつぼだ。
またスイーツ親方(芝田山親方/元・大乃国)を中心に、春日山親方(元・勢)らがカラフルなエプロンをしてパンを売るエリアもある。パンですよ、パン。国技館がパン屋になってるんですよ!
さらには相撲博物館では5月場所中は『白鵬展』が行われて、土俵下で実際に白鵬が座っていた座布団に誰もが自由に座れて、これまた自分のスマホを渡すと係の人が撮影をしてくれる。
2階に行けば『親方ちゃんねる』のオリジナルグッズが入つたガチャポンがあったり、そうそう、親方系ではないが、2階のフォトスポットでは、幕内土俵入りの一員の絵に入り込んで撮影ができたり、誰もが参加できて商品が当たるガラポン抽選会があったりで、のんびり席に座って相撲を見てる間もないほど大忙し。
なんだかもう、こうなると大相撲はフェスみたいだ。夏フェス。朝8時台から夕方6時までたっぷり楽しめる大相撲鑑賞はフェスみたいだと前々から思ってはいたものの、今や完璧にフェス状態だ。メインのステージがあり、その裏でトーク・イベントや撮影タイムが行われ、さまざまなお楽しみやお買い物が楽しめる。
間垣親方(白鵬)は親方業を始めたことで「大相撲はいろいろなものがあって成り立ってることがよくわかりました」と言っていた。ただ相撲を見るだけではないいろいろな要素があるからこそ、大相撲は江戸時代から興行として続いている。その形も戦前、戦中、戦後、平成と、少しずつ形を変えてきた。スター力士がいたり、圧倒的に強い人がいたり。もし、そういう存在がいないとしても、序ノ口から幕内まで1日約170番もの相撲が取られる。興奮させてくれる取り組みは、毎日いくつもある。
たとえ推し力士がいなくても、それはそれで十分に楽しい。リアルで見る相撲、ド迫力の勝負が数秒でつく。まさに「映画も倍速、早送りで見る」世代にだってぴったりじゃないのか?
ちなみに、《こんな物まで売るのか?ベスト3》は、「食パン」「お守り(相撲の神さまを祀った神社のもの)」「マカロン」だろうか。力士の顔を入れたスプーンセットっていう昭和なグッズにもバカうけし、何でもありの節操のなさに大相撲という興行のしぶとさを見る思いがしている。
最後に、ぜひこれも書いておきたい。驚嘆すべくは、横綱白鵬を筆頭に、レジを打ったり、トークに出たり、これまでの本業であった相撲を取る以外のことも、各親方たちが嬉々として、実に楽し気にやっているのがすごい。
ああ、大相撲って興行なんだなぁとしみじみ思う。そういう場にほとんど出てこない元力士(親方)もいるが、まぁ、それもそれ。それぞれの役割分担や、やりたくないならやらないでなんとかなっちゃうところも、なんというか、逆に大相撲の多様性とか寛容さと捉えたい。
なお、大相撲5月場所は22日まで東京・両国の国技館で開催中。チケットは日本相撲協会のホームページ、入場券情報から買える。
和田靜香(わだ・しずか)◎音楽/スー女コラムニスト。作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦やアルバイト迷走人生、政治など書くテーマは多岐に渡る。主な著書に『スー女のみかた』(シンコーミュージック・エンタテインメント)、『世界のおすもうさん』(岩波書店)、『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた。』(左右社)がある。ちなみに四股名は「和田翔龍(わだしょうりゅう)」。尊敬する“相撲の親方”である、元関脇・若翔洋さんから一文字もらった。