兄は良くて私はダメ
千葉県在住の美佳さん(仮名・42歳)は、幼いころから2歳年上の兄・奏太(仮名)を巡って不条理を感じて生きてきたという。
「物心ついたときから母親に“そうちゃんのほうが可愛い”と面と向かって言われていました。“そうちゃんをお兄ちゃんにしてあげたくてあなたを産んだのよ”とも。ことあるごとに兄ばかり贔屓され、私の友人の母親とは付き合わずに兄の学年の母親たちとの社交に必死でした」
美佳さんにとってはそれが普通のことだった。おかしいと感じたのは、中学生のとき。
「当時中学3年生だった兄・奏太がサッカー部に入っていたんですけど、はっきり言って運動神経も悪いしレギュラーになれなかったんです。そうしたら母親が学校に怒鳴り込みにきて“そうちゃんをレギュラーにしない先生はおかしい”とか大騒ぎされたんです。私は陸上部だったので、校庭でその場面を目の当たりにして恥ずかしくて消えたくなりました。兄は当然のように振る舞っているし、友達には“お母さん怖いね”と言われるし」(美佳さん、以下同)
万事がそんな調子だったという。
「母はとにかく兄を特別な人間にしたい、特別扱いしてほしいという人だったので、学校のPTAや役員なども買って出ていました。私の学年では何もやったことはありません。習い事も兄は毎日のように何かをしていたけれど、私は水泳だけ」
溺愛されていた兄も徐々にモンスター化していったという。
「思いどおりにならないとすぐにキレる。そうすると母親は兄本人を怒るのではなく、兄をキレさせた周囲に怒るんです。例えば兄がリレーの選手になれなかったら悪いのは選んだ担任や足が速いクラスメートに怒りが向く。生まれ持った性格もあるのかもしれないけど、兄のあの性格は確実に家族の育て方のせいだと思う」