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ー 二度寝、プロはどう見る?

 日本の女性の睡眠時間は世界の中でもっとも短いといわれている。さらに40代を過ぎたあたりから、更年期に起因する不眠が加わり、「睡眠負債」(寝不足や熟睡できない状態が続くこと)を抱えることになる。質の悪い睡眠を続けていると、肌が劣化し、白髪が増えて、体重も増加し、老化に向かってまっしぐら。

 エイジングケアの専門医でもあり、理事長を務めるグランプロクリニック銀座などで睡眠美容外来を開始した岩本麻奈先生は「エイジングケアはどんな美容施術よりも眠りを味方につけることが王道です」と、睡眠こそが若さを保つ秘訣だと話してくれた。

「眠れない」ではなく、「眠るためにどうするか」……。その参考になるのが、いつでも若く美しい、女優や女性タレントたちの睡眠法。良い睡眠をとるために実践しているさまざまな工夫は必見だ。

二度寝、プロはどう見る?

 厚生労働省では、健康に過ごすためには6~8時間の睡眠を推奨している。しかし、睡眠時間は個人差が大きく、最近では「日中に眠気で困っていなければ睡眠時間にこだわる必要はない、と言われはじめている」と岩本先生。

 つまり、睡眠時間に“正解”はなく、自分にとってベストな睡眠法と睡眠時間を見つけることが大切なのだ。

 その参考になるのが、黒柳徹子さんの睡眠法。以前は夜型だったそうだが「今は夜11時ごろにはお布団に入って寝るようにしています。そうすると朝5時ごろ1度目が覚めるので、そこで起きてお白湯を飲んで、チョコレートとか甘いものをちょこっと食べて、もう一回寝るんです」と語っている。

 最初に6時間、二度寝してから4時間でトータル10時間近く寝ているという。

「二度寝は睡眠専門医の間でも、意見が分かれるところで、杓子定規に解説するなら、“おすすめできない”派の意見が多いかもしれませんね。でもこの眠り方で黒柳さんは調子がいいのですから、私はこのままでよろしいのではと考えます。むしろ、トータルで9~10時間寝られるのはすごいこと」(岩本先生)

 60歳以上では、実に3人に1人が睡眠に対して悩みを抱えているとの厚生労働省の調査もある。日中の活動量の低下や、ストレス、身体の病気からくるものなど。その原因はさまざまだが、コロナ禍以降は、さらに増えているともされる。

「年齢が上がるにつれて、睡眠力も老化して、眠りの深さや連続性が劣化します。子どもで9時間くらい、20代で7時間前後、40代で6時間半、65歳以上は6時間くらいと、短くなっていきます。しかも途中で何度も目が覚めてしまい、“よく眠れない”と悩みが出てくるんです」(岩本先生)

 睡眠に関して、必要時間に個人差があるのも事実。朝、スッキリと目覚め、昼間イキイキと活動し、夜は自然と眠る……このサイクルがスムーズであれば、「寝つきをよくしなければ」とか「何時間寝なければ」と、過剰に意識する必要はないということだ。

「黒柳さんのように、自分なりの眠りを見つけ、日中を元気に過ごせるのがいちばん。私は人と違うけど大丈夫かしら、と思い悩む必要もないのです」(岩本先生)

 その悩みがさらに不眠を呼ぶことも。自分の体調をしっかり見極め、不調を感じるようであれば専門医に相談を。

 ただ、女性が気になる美容に関する睡眠になると少し趣が変わってくる。

「二度寝をするなら、深い眠りではなくまどろむ程度で、長くても15分くらいで。目覚めを司るコルチゾールというホルモンは、代謝を促進する働きがあり、二度寝で深い眠りに入ってしまうと、分泌が低下してしまうのです」(岩本先生)

 十分な眠りをとっていても二度寝してしまう場合は、睡眠の質を疑い、環境を改善してみよう。

【解説をしてくださったのは…】
岩本麻奈先生

 東京女子医科大学卒業、パリで抗老化医学、予防医学などを学ぶ。現在は最先端再生医療や美容医療に携わり、2021年より睡眠美容外来を開設。健康や美容のためにいかに睡眠が重要か啓発。主な著書は『睡眠美容のすすめ』など多数。