会社の後輩へ相続を決めた男性
70代の男性は2人の知人に財産を半分ずつ譲るという遺言書を作った。1人は定年まで働いた会社の後輩女性。入院した際、親身に世話をしてくれた女性に恩返しをしたいという。自分の葬儀の手配などを頼むと快く引き受けてくれた。もう1人は亡くなった事実婚の妻の甥だ。
「男性には姪が2人いるけど付き合いもないそうです。疎遠な身内より、亡くなった妻へのお礼の気持ちを込めて、今も交流のある妻の甥に譲りたいんだと言っていました。生涯独身の人が増え続けていますし、子どもを持たない夫婦もたくさんいるので、他人への相続や寄付は今後増えていくでしょうね」
法的相続に縛られず、好きな相手にお金を残す場合、遺言書が必須となる。自分で作ることもできるが、次の内容を漏らさず明記しなければ無効となってしまう。
1.「遺言書」と表題を付け、自筆で書くことが原則で、誰に(氏名)何をいくら渡すのか金額や割合を書く。日付、署名、印鑑が押してあれば、用紙や書式は何でもいい。
2. 遺贈する相手が個人なら生年月日、法人なら名称と所在地を明記する。
また、遺言書の存在を周囲の人に知らせておくことも大事だという。
「ひとり暮らしで突然死などした場合、遺言書に気づかれないこともありますし、遺言書の存在とともに自分の意思を伝えておくことで身内とモメるリスクを回避することにもつながります」
曽根さんは「これからは相続も自分で演出する時代」だと強調する。
「必ずしも相続という形をとらなくてもいいと思っています。財産を残すのであれば、生前に渡したほうがありがとうと感謝してもらえます。年間110万円までは贈与税がかからないので、何年かに分けて直接渡してもいい。質素な生活をして財産を貯めている高齢の方がいっぱいいますが、貯めておいても増えないし、相続税で減ってしまうことになるので、もっと自分のために使ったり、どう有効に使い切るかを考えたほうがいいと思いますよ」
財産は“残す”から“有効活用”へ─。発想の転換が必要だ。
「遺言書」について教えてくれたのは……
曽根惠子さん 株式会社『夢相続』代表取締役。『相続に困ったら最初に読む本』『相続・贈与の本』など著書60冊以上
<取材・文/萩原絹代>