政府に訴える沖縄戦遺族の嘆きと叫び
'21年4月21日、防衛省沖縄防衛局の「設計変更申請」からちょうど1年後。永田町の衆議院第一議員会館で行われた、具志堅さんらによる防衛省・厚労省交渉と院内集会は、コロナ禍で入室制限もある中、静かにして熱い空気に包まれていた。
官僚たちは「辺野古への埋め立て用の土砂が南部の鉱山から調達されると決まったわけではない」、「遺骨は業者の配慮を経て適切に収集されると認識している」などと話し、用意した文言を読み上げるだけ。彼らが誠意や真摯さの感じられない態度に終始する一方、交渉に臨んだ具志堅さん、北上田さんたちの言葉は対照的だった。
とりわけ、沖縄戦で若き陸軍大尉だった祖父を亡くしている遺族・米本わか子さんの訴えは非常に中身が濃く、説得力に満ちていた。
祖父がまだ沖縄南部の土地に眠っていると確信する米本さんは、官僚の答弁に怒りを隠さず、涙ながらに訴えた。
「戦争で殺され、採掘業者に殺され、辺野古の海に埋められ、どうして私の祖父は、3度も殺されなくてはならないんですか!」
それを補完するように、この政府交渉に立ち会った政治家のひとり、川内博史衆議院議員(当時)がこう述べたとき、筆者も目からウロコの落ちる思いがした。
「ご遺骨が、そこにあるということがわかっていて、それを埋め立てに使うというのであれば、それは死体損壊罪に当たりますよ。その法解釈が防衛省と厚労省できちんとできているのか、という話ですよ」
まったくそのとおりだと思った。
具志堅さんは、さまざまな場で何度も強調してきていることを、その日の院内集会でも語っていた。
「業者に遺骨収集を任せるなんて無理です。小さな骨や薄い骨は、土砂に溶け込んでいます。骨だけでなく、血も肉も染み込んだ土地です。そういう場所は手をつけずに、慰霊の場所、平和のための学習の場所として環境保全を強化すべきだと思います」
具志堅さんが一石を投じた波紋は大海へと広がり続けるはずだ。そうしみじみ思えた瞬間だった。なぜなら、具志堅さんの発する言葉には、いつでも普遍的な力が備わっている。