スケ連と羽生の仲が悪くなる要素がない

 羽生のファンが続ける。

「羽生選手は今回の会見で、“心が空っぽになってしまう前に自分自身を大切にしないといけない”と口にしました。'19年に選手への誹謗中傷が問題になった際、スケ連は“必要な措置をとる”とコメントしていたのにこんなことを言わせてしまったのは、スケ連が羽生選手を守ってこなかったからではないでしょうか。羽生選手がスケ連を信頼できなくなるのもうなずけます」

 フィギュア事情に詳しいスポーツライターの梅田香子さんに羽生とスケ連の関係について聞くと、

「関係が悪いなんてことはまったくないですよ(笑)」

 と、実情を明かしてくれた。

「'94年から'06年まで、スケ連のフィギュア強化部長を務めた城田憲子さんが、現在は羽生選手のスタッフをしていて、スケ連との交渉ごとは城田さんが行っています。現在の強化部長である竹内洋輔さんは、'02年ソルトレークシティー五輪に出場しており、このときの監督が城田さんだったこともあり、彼女から見れば子どものような存在。それもあって、スケ連と羽生選手の仲が悪くなる要素がないのです」(梅田さん、以下同)

北京五輪のエキシビションでカメラに手を振る羽生結弦
北京五輪のエキシビションでカメラに手を振る羽生結弦
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 また、トラブルの種は時代とともに減っている。

荒川静香さんや村主章枝さんが活躍していたころは、“振り付けのために費用をください”などと、選手の両親やコーチが直接スケ連に強化費用の交渉をしていました。しかし、家庭の懐事情を担当者が主観で判断していたので、裕福な家庭には費用が出づらいなどの不公平感がありました。今では、スポンサーの有無なども考慮して選手間で公平に割り振られていますから、金銭面での関係悪化はありません

 とはいえ、プロ転向によって羽生は広告契約の収入の10%をスケ連に収める必要がなくなり、スケ連は大幅な収入減となるので、痛手を負うことになりそうなもの。

もちろん、羽生選手のプロ転向で収益が減る可能性はあります。しかし、羽生選手は多くの功績を残しており、スケ連側もそれを称える気持ちがありますから、“引退しないで”なんて言えません。いちいちプロ転向の許可を取る必要もありませんし、報告さえすればよかったのです

 つまり、羽生とスケ連は良好な関係を築いていたのだ。実際、会見の翌日に羽生はスケ連を訪問して感謝を伝えている。