仲野の演技力を認める同世代の俳優たち

 仲野の演技力には早くから定評があった。それだけに売れるまでの間には歯がゆい思いもしたはず。くじけなかったのは、仲間の俳優たちが仲野の才能を認めていたせいでもあるだろう。

 仲野は『初恋の悪魔』でお人よしの警察署総務課職員を好演しているが、素顔も陽気で心根がいいことで知られる。このため、親しい俳優が多い。林遣都、菅田将暉、神木隆之介、染谷将太(29)、柄本時生(32)、間宮祥太朗(29)――。みんな仲野の演技力を買っていた。

 ホロリとするのが、やはり苦労が長かった中村倫也(35)の言葉。2018年11月、『日経トレンディ“2019年 来年の顔”』に選ばれたとき、中村はこう言った。

《太賀、賀来賢人と会ったとき、“倫也が売れてうれしい”と言われた。出会いを大事にしてきて良かった》

 親や所属事務所からの言葉より、苦労をともにした仲間の喜びが一番心に染みたというのだ。仲野も賀来も心から祝福したからだろう。

 映画界の重鎮・中島貞夫監督(87)によると、昭和期は違った。助演者同士は食うか食われるか。ライバル心が強かった。スターと非スターは最初から完全に区別されていたから、親しくなるどころか、対等な関係にすらなれなかった。

 平成期に入ってからも同年代で同格の俳優同士は打ち解けにくかった。対抗意識からだ。1人の売れっ子を中心とする「●●会」もいくつか存在した。事実上の派閥である。また、「嫌いだから」という至ってシンプルな理由での共演NGもあった。

 今の若手俳優は異なる。みんなで一緒にドラマ界や映画界を盛り上げようとしている。仲が良い。その中心にいる1人が仲野だ。所属事務所の垣根を越えて飲みに行き、演技論や作品論を語り合っている。