みんな「いつ息が抜けるんですか?」って(笑)
僕が40代のときに『GOLDFINGER'99』でアメリカに行ったときも、恐怖心はありました。「今回は生半可な気持ちでは身にならないな」と思っていたし、その覚悟をしっかり持って行かなきゃという意識もあったんです。でも、「待てよ。アメリカに行ったら、“郷ひろみ”に戻ってこられるのかな。もう周りには必要とされなくなるんじゃないか」という恐怖心もありました。
というのも、何年かかるかわからなかったから。腰を据えてやっても、3年から5年はかかるだろう。でも、その背中を押したのが、自分の中から湧いてきた勇気でした。「僕は必ず何かを手に入れられる。その手に入れた自信で次に進めるだろう。だから行こう!」って。
もし行かなかったら、この気持ちを抱えたまま、何となく歌えるまま、ごまかしながら、50代、60代と歌っていくことになる。それまでも歌をうたってきたから、ごまかすことはできたと思うんです。でも、自分が知ってるわけですよ。そんな自分はダメだって。ここで踏み出せば、間違いなく次に移れるだろうって。
歌手の本質は「歌がうたえること」だと言ったけど、アメリカに行く前にそれに気づいてたのかもしれないですね。だから、行ったんでしょうね。僕の中で、その本質に足りない部分があったんだと思います。
僕は、人に見られてるほうがラクなんですよね。ひとりでいるときのほうが大変なんですよ(笑)。その差違がイヤなんです。人に見られてようが、見られていまいが変わらないことが好きなんです。そうでありたいなって思う。人が見てないから、いいかげんなことをする。それって、たぶんどこかに出るんですよ。それを経験してきているから、見られていようが見られていまいが、嘘がないところに行きたいなって。
僕は、うまくいかないことがあったり、挫折を感じたときも「ま、いいか。こんなこともあるよな」と思えるタイプなんです。どんなときも、100%で精いっぱいやってるから、これだけやってダメだったら、しょうがないよねって思えるじゃないですか。
これは僕の持論なんですけど、準備を100%でやらないと本番で100%の力が出ないんですよ。例えば、リハーサルで100%やって、良くて本番で100%ですよ。もしかしたら、アドレナリンが出て120%になるかもしれない。でも、リハーサルだから、こんなもんでいいかなって80%でやっておくと、それ以上いかないんです。ということは70%かもしれないし、60%かもしれない。それだけリハーサルって大事なんです。だから、自分で納得できるところまで必ずやります。
こんなふうに話すと、みんな「いつ息が抜けるんですか?」って言うんですが、だって寝てるときは無防備じゃないですか(笑)。睡眠を7~8時間とるってことは1日の3分の1も休んでるんですよ。僕はそれで十分だなって思っています。
「寝てるときの僕はどうなの?」って、それは聞いたことがないな。もう大人だから、子どもみたいに動くことはないでしょうけど(笑)。