もともとPKOで災害派遣や国際平和維持活動をしたいと思って自衛隊に入ったBさん。入隊6年目だったが努力が報われない状況に幻滅し、見切りをつけるしかなかった。
「自衛隊に入りたいという人は、基本的には正義感があって、世の中をよくしたいとか、人を守りたいとか、優しい心を持っていると思います。でも、上司の言うことが絶対で、時には自分の意思に反することもやらなきゃいけない状況になってしまう。今回の告発をした五ノ井さんも、すごく素敵な夢をお持ちでしたよね。だからこそ、今の状況を許せないんです」
組織を改善しようとしたら“マイナス評価”
セクハラのみならず、業務内でも妨害をするとは許しがたい。
1999年から6年間、北海道の駐屯地にいたというBさんは当初、女性の先輩に相談した。
「でも、返ってきたのが“セクハラをセクハラだと思ったら負け”と言われてしまって。チヤホヤされるだけ儲けもんだ、みたいなことを言う人もいるんです。これまでセクハラを告発しても“色仕かけしたお前が悪い”みたいに言われて泣く泣く辞めていった女性隊員もいました。自衛隊の内部にある、セクハラが容認されているような空気が、まずおかしい」
自衛隊に入り、PKOで国際平和などに貢献したいというBさんの夢を潰えさせてしまった罪は軽くない。
「セクハラやパワハラなどの問題が起きても対処しないし、対策もとらない。だから、“あんなことが許されちゃうんだ”と考える人が増えていったのだと思います。幹部という立場からしても、そういう雰囲気を感じます」
というのは、現役の自衛隊幹部であるAさん。自衛隊での不祥事が増加することには理由があると感じている。
「組織を改善しようとしたことが悪く取られて、人事面で影響を受けている人も確かにいます。パワハラを指摘した人について、マイナスになるような情報を人事異動の時期に上官が流し、出世を妨害するケースもある。
正義感がある人ほど、定年までそういった目で見られることになります」(Aさん)
これでは内部からの自浄作用が働くはずがない。現役の自衛官であるCさんも、その隠ぺい体質が問題だという。