アイデアマンの夫とともに乗り越えた
大阪府箕面市に、マダムシンコ本店はある。
甘味茶寮川村オープン後、幸治さんは知人を介してパティシエと知り合う。そして、新たにケーキ店を出店することを決めるのだが、そのお店こそ、箕面市にあるマダムシンコ本店だ。
店内の内装から始まり、食器、従業員のユニフォームまで、ぬかりなくヒョウ柄で彩られている。
毎週日曜日になると、信子会長自ら店頭に立ち接客を行う。会長に会いたいと、数多くのお客さんが足を運ぶ。
「先日、団体のお客様がいらっしゃるということで信子会長が接客したのですが、やっぱり信子会長がいるのといないのとでは熱気が違うんです」
スタッフの話を横で聞いていた信子会長は、「ミッキーマウスやないんやからな。あ、ミッキーは会計はせえへんから私のほうが働くか」と笑う。
ゆっくりと店内を見渡すと、「自分たちで内装やったりね。ここはホンマに今につながる場所」と、わが子を見つめるように本店への愛情を語る。
店内でも販売されている『マダムのわらびもち』は、マダムブリュレ誕生前の主力商品であり、甘味茶寮川村時代から提供する、いわばマダムシンコの象徴といえる看板メニュー。その横に、マダムブリュレや新作バウムクーヘンが鮮やかに並ぶ。本店は、マダムシンコの過去と現在が重なり合う、人生を再逆転させたホームグラウンド。
ケーキに夢を託した理由を、幸治さんはこう語る。
「当時のケーキ業界は、サービス業のエッセンスが圧倒的にありませんでした。パティシエ自らが『いらっしゃいませ』と出迎えるようなことはしません。お客様も購入したらすぐ退店する。サービスの塊のような会長のキャラクターや手腕を融合させることができたら……面白くなる予感がしたんです」(幸治さん)
マダムシンコ誕生前夜。仕掛け人である幸治さんは、なけなしのお金50万円を使って、信子会長の宣材写真を撮影し、“元銀座のママが手がけた洋菓子店”というキャッチを打ち出していく。
「幸治くんはアイデアマンなんですよ。彼がいなかったら、今の私はないんです」