「繁殖はさせない」動物ビジネスには反対
山本さんは「そもそも動物をビジネスにするのは反対」という信念の持ち主だ。だからこそ、大内山動物園では雌雄のペアでやってきた動物は除いて、進んで繁殖はさせない。
「動物園で繁殖させたら、その子は一生檻の中で過ごすことになる。それはかわいそうだからね」
個人経営の大内山動物園は自治体などからの支援や助成金も得られないため、経営はやはり苦しい。従業員約30人の人件費や餌代、維持管理費など、毎年約1億5000万円の赤字だ。
「“コロナで大変でしょう”と聞かれるけど、コロナなんて関係なく、年中厳しいよ」
引き取る動物が増えるとともに、園の敷地面積は約5倍に拡大。土地購入や飼育舎の建設も山本さんが私財を投じた。これまで山本さん個人で持ち出した金額は14億~15億円にも上る。
「金を遺して死んでもしょうがないし、動物たちに全部あげるつもり。人間の子どもに金なんて遺さなくていいし、そもそも、財産は自分たちでつくればいいんだよ」
と山本さんは笑う。全国から、大内山動物園の理念に共感した人から寄付も寄せられている。
「お客さんの入園料は餌代や病院代に充てていて、足らない分を僕が出しているだけのこと。動物園に来てくだされば、結果的に保護した動物を救うことにつながります。ひとりの力は小さいかもしれないけれど、みんなで協力し合えば大きいパワーになるはず。“みんなの保護動物園”のように思ってくれたらいちばんうれしいね」
<取材・文/堤 美佳子>