逃げ道としての「YouTube」は正解か
不祥事を起こした者がYouTubeを起点に再起を図るのはそもそも芸能人のやり方だった。手越祐也は見事だった。
新型コロナの緊急事態宣言状況下での度重なる“ステイホーム破り”が明らかになったことで、2020年5月にジャニーズ事務所から活動自粛の処分を受け、翌月に退所。独立会見では、リポーターらの質問に応じながらもひたすら喋りまくってツッコまれる隙をほぼ与えなかった。さらに同時期にYouTubeチャンネルを立ち上げて、誤解を生まないように自分で発言できる場所を作った。
筆者も手越を後日インタビューしたが、自分のやりたいことに対してとても素直な印象を受けた。
彼の「タブーやNGは、エンタメを楽しくするための障害でしかない気がする。ルールはもちろん必要ですけど。格好良いエンタメを作るためならなんだってどんどんやるべき。「あれはダメ、これはダメ」と事務所が言うのは確かにしょうがないけど、観てくれる人たちには関係ない。自由度が高くて、純粋に楽しめるエンタメを取り戻すにはどうしたら良いか。ほんの少しでも「最近のエンタメは楽しい」と言わせたら勝ち。僕はそういう風に変えていきたい」という言葉を聞いて、YouTubeはぴったりのフィールドだと感じた。
元雨上がり決死隊の宮迫博之も闇営業問題とその記者会見が波紋を呼んだが、YouTuberとして返り咲いた。こちらでもヒカルの存在が一役買っていた。そして、不祥事をうまく逆手に取ることができた。宮迫に対して反感を持つ人も多いが、それでも世間を賑わせたスキャンダラスな部分に惹きつけられ、つい動画を再生してしまうのは人間の性分。宮迫は自虐もからめながら、視聴者の興味をくすぐっていった。
良くも悪くも、YouTubeは再起場所になっている。ただ、不祥事やトラブルの逃げ道となっている現状もある。SNS上では「企画力がないと飽きられるが、最初のうちの興味深さだけの視聴だけでも結構稼げるのでは?便利な世の中やな」「ちゃんと謹慎して反省して芸能界に戻って欲しいしYouTubeを逃げ道として使わないで欲しい 芸能界に戻って1から頑張って信頼取り戻せばいいのに」と疑問の声も挙がっている。
さらに「前からYouTubeでやってきた人はどう思うんだろう」「マジメにYouTuberとして活躍している人にも失礼」と、以前からYouTubeに取り組んできた投稿者らの気持ちを慮る意見も多い。
今後もYouTubeの“逃げ道化”は拍車が掛かるだろう。YouTuberも、ヒカルが田口氏をゲットして話題や数字を稼いだことを見て、“第2の田口翔探し”をしているはず。
特に注目されているのが、持続化給付金を騙しとったとして逮捕された元不動産会社勤務・佐藤凜果被告の今後だ。ネット上で反響をあつめたのは、逮捕時の移送のニュース映像。そのルックスが評判となった。
しかし、その後の取り調べで語られた「老後のために2000万円が必要だと聞いて不安になった」という犯行理由も、現代の若者たちの意見として考えさせるものがあった。そんな彼女にアプローチをかけようとしているYouTuberは少なくないのではないか。
不祥事を起こしても、結局は生きていかなければならない。そのためには稼がなくてはならない。そういった手段のひとつとしてYouTubeが選択されるのは、時代の流れとして当然なのかもしれない。ただ、そこには必ず被害者が存在する。自分がやったことに対して反省を示したとしても、パブリックな存在となる以上、是非は常に問われるだろう。