首都圏の完全復活はまだこれから
全国規模での花火大会では、どのような変化が見られたのだろうか。
「地域によって差がある印象です。例えば私たちも参加した日本三大花火のひとつ、新潟の長岡まつり大花火大会は8月2日・3日に3年ぶりに開催され、打ち上げ花火の規模は、コロナ禍前とほぼ同等でした。観覧者数は大幅に制限されたものの、多くの人に感動を与えられたと思います。
また、秋田・大曲の全国花火競技大会も、有料観客席を大幅に減らしたものの、8月27日に無事開催されました。一方で、隅田川花火大会が中止になるなど、感染者が多い首都圏ではまだ元に戻っていないのが現状です」
地方での花火大会は復活の兆しが見えてきたものの、まだ全国的に完全復活とはいえないようだ。
高橋さんの会社でも今夏、長岡の花火大会のほかに、東京競馬場での花火大会や、地元・神奈川県にある慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスで開催された七夕祭に参加。また、花火大会だけでなく、アーティストのライブビデオや、テレビのバラエティー番組での花火演出などさまざまな仕事が増えてきつつある。
「2年もの間、打ち上げられなかった花火がありました。花火を打ち上げる会社の多くが同じ状況だったと思いますが、今年になってようやく保管していた花火を使うことができ、ほっとしています。
花火大会は屋外で開催されるもの。感染対策をしっかりとりながら、さらに制限が緩和され、早く通常どおりの夏が来るといいなと思っています」
夏が終わり、花火も来年まで見られなくなるのかと思いきや─。
「花火は夏だけだと思われがちですが、意外と秋に開催される花火大会も多いのです。また、今年は多くの大学で学園祭も開催される予定なので、11月くらいまでは、どこかで花火を楽しめるはずです。まだ今年の花火を楽しめていない方は、ぜひ足を運んでみてください」
つらい2年間を乗り越えた今、花火業界は一歩ずつ、だが確実に前に進んでいる。
お話を伺ったのは……
(株)ハナビヨコハマ代表取締役・花火師。花火の打ち上げのほか、花火大会の業務支援、テレビやライブの演出なども手がける。
取材・文/樋口由夏