自治体から米軍までフロッピー利用の謎

誤送金問題で揺れた山口県阿武町の役場。入金データのフロッピー使用でも注目を集めた
誤送金問題で揺れた山口県阿武町の役場。入金データのフロッピー使用でも注目を集めた
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 今年5月に発生し、世間を騒がせた山口県阿武町の4630万円誤送金問題。そこで突如、注目を浴びたのがフロッピーディスクだ。2011年には製造中止となった懐かしの記憶媒体が、金融機関への新型コロナ対策関連給付金の入金データの連絡に、'22年になっても使用されていた。

金融機関としては、フロッピーディスクによる振り込みデータの受け渡しをやめたいのが本音。しかし、自治体の要望があるため受け入れざるをえないのです。これにはコストの問題があります。

 インターネットバンキングのようなセキュリティーの高いシステムを導入するには、専用システムを導入する予算が必要になります。小さな自治体の厳しい財政状況で費用を捻出するのは至難の業。だから仕方なくフロッピーを使い続ける自治体が今もあるのです」

 CDやDVDに比べて、フロッピーは壊れやすい。それなのに意外な場所で、2019年まで現役で使われていたことが明らかに。その場所とは、なんと米軍! 核ミサイルの運用管理をフロッピーディスクで行っていたのだ。フロッピーには、核ミサイルの発射プログラムのデータが入っていたという。

ジャーナリストの村上和巳さん
ジャーナリストの村上和巳さん

「核ミサイルを発射させるには“認証”が不可欠。つまり“間違いなくアメリカ大統領が核発射を希望している”という確証と、発射までの手順が決められているとおりであることの証明が必要です」

 ネットからアクセスできるシステムでは、本当に大統領なのかを認証するのが難しい。何者かが介入するリスクもある。

「フロッピーであれば、それを所持している人は正規の担当者だという認証になります。さらにフロッピーの中には、核兵器の運用部門だけが知っているプログラムが入っている。これによって認証が二重になり、セキュリティーの高いものになっていたのです」

 一方、フロッピーどころの話ではないのが、ウクライナへの侵攻を続けるロシア。

「ロシア軍では通信手段としていまだにモールス信号が使われています。ウクライナ戦争で『巡洋艦モスクワ』が撃沈されましたが、それを知らせる第1報は『モスクワ』からのモールス信号でした。通信マニアが傍受して、発覚したのです。これには驚きました」(村上さん)