脳トレのドリルよりもすべきは会話・趣味・仕事

 外出時には、おしゃれも楽しむことをすすめる。

「“年がいもなく”なんて言葉を気にして、消極的になるのはナンセンス!きれいでいたい、若くありたいという意欲を、もっと周りも本人も認めるべきです」

 高齢者の意欲が落ちて行動に消極的になった結果、外出が減って足腰が急速に弱ってしまうのが問題だ。

「結果として認知症の発生リスクも高まります。とにかく今できることを減らさずに持続する。つまりは4つ目のポイント、“できることに目を向ける”につながります」

できることに着目しその機能を伸ばす

 残念なことに、年を重ねると身体機能はどうしても衰えていく。失ったものを数えると気がめいるが、そんなときには、「パラリンピックの選手たちをお手本にするといい」と和田さんは言う。

「彼らは、できないことよりもできることを伸ばして活躍している。高齢者も同じように、残存機能を持続し、さらにはそれを伸ばそうという考え方が大切です」

 そのためにも、サポート用品は積極的に活用したい。

「例えばリハビリパンツ(ショーツ型おむつ)をはけば、安心して外出することができます。トイレの心配をして家にいるよりも、外出していろいろな刺激に触れることのほうが、ずっと大切」

 そして“年がいもなく”とか、“高齢者はかくあるべし”といった固定観念は手放すこと。

「“人生いろいろ、なんとかなるさ”と考えて。タレントの高田純次さん的生き方がおすすめですよ(笑)」

 これら4つのポイントを親に実践してもらえば、認知症発症を遠ざけ、健康寿命を延ばす手助けになる。

「85歳を過ぎたら、どんな人でも脳に認知症の変化が生じます。ですが、発症を遅らせることは可能。それには脳を活性化することが大切ですが、かといって脳トレのドリルを何冊もやればいいということではありません」

 脳を活性化させるには、会話を楽しみ、趣味や仕事を続けるなど、刺激を受けて生き生きと過ごすこと。

老いを遅らせる「あかさたな」
老いを遅らせる「あかさたな」
【画像】老いを遅らせる「あかさたな」行動表

「私が考えた“あかさたな表”(上)も参考にしてください。高齢だからと節制させたりできることを取り上げるのではなく、適度にゆるく過ごしてもらうのが正解です」

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和田秀樹。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。「和田秀樹こころと体のクリニック」院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。

<取材・文/千羽ひとみ>