片や、ルーキーイヤーから2年連続の二桁勝利をあげて、誰もが認める若き虎のエースへと成長した藤浪。その人気ぶりからシーズンオフにはテレビ露出も増え、2014年末に放送された、テレビ朝日系のスポーツバラエティー番組『中居正広のプロ野球魂』からもお呼びがかかる。

 プロ野球ファンにとっては年末の風物詩として楽しまれた同番組。この年は、当時現役だった『読売ジャイアンツ』の阿部慎之助、『福岡ソフトバンクホークス』の松田宣浩、そして『東北楽天ゴールデンイーグルス』の則本昂大ら、スター選手とともにゲスト出演した若干二十歳の藤浪。

大谷は「投手よりも野手の方が上」

 それぞれのポジションから選手を1名ずつ、ドラフト会議のように選出して“ドリームチーム”を結成するという企画において、阿部チーム、松田チームの双方が“目玉”である大谷を「抑え投手」として指名。ところが、対する則本と藤浪の合同チームは、大谷を投手ではなく「野手」として指名。

「藤浪のゴリ押しで(決まった)」と指名に至った内情を明かす則本に、「そうですね」と満足そうな藤浪。中居正広に「友達だから(指名したんでしょ)」と茶化されつつ、「野手として。野手としてバッティング、肩、走塁含めて」と、あくまでも野手としての能力を評価した上での使命であると力説。

 そして興味深そうに論評を聞いていた中居が、「(大谷選手の)評価は投手よりも野手の方が上?」と聞くと、藤浪は「そうですね」と言い切るのだった。

 前出の野球担当記者も、中居の番組を「ええ、覚えていますよ(笑)」と振り返る。

「藤浪投手は当初、大谷選手を“野手からマウンドへ”の“二刀流”構想を練っていたものの、企画のルール上叶わずに野手を優先したんでしたね。投手・大谷を認める一方で、実際にグラウンドで対峙した投手にしかわからない、打者・大谷の凄みを知っているからこその野手優先だったのでしょう。

 何度か対談もしている両者ですが、ピッチャー談義こそすれども、藤浪投手が明確に“大谷は打者”と私見を述べたのは最初で最後だったと記憶しています。バラエティー番組の雰囲気に絆されて出た、ライバルによる貴重な大谷評でしたね」