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ー ヘルプマーク、椎名林檎のグッズと酷似

「依然として“カワイイから”という理由でグッズ化されてしまうことに愕然としました。フリマアプリの『メルカリ』は2018年の時点で、その転売が問題視されて随時削除の対応をしていますが、一部のオークションサイト​では相変わらず《10個まとめて5300円》といった取り引きが横行しています。

 それが椎名林檎さんによって、“ヘルプマーク”の誤った使われ方がさらに助長されると思うと残念でなりません」(福祉事業関係者、以下同)

 ヘルプマーク。この単語を聞いてもピンとこないかもしれないが、電車内や医療機関などで見かけたことがある人も少なくないのではないだろうか。旅行カバンにぶら下げる縦型のネームホルダーのような形状で、赤の下地に、上下に配置した白の十字とハートマーク。このマークには、本来ならば、次のようなメッセージが込められている。

「義足や人工関節を使用している人、内部障害や難病を抱える人、妊娠初期の人。つまり、パッと見だけでは、わからないのですが、実際は援助や配慮を必要としている人が、周囲の人にそれを知らせることで、援助を得やすくようにする目的のものです。

 ヘルプマークをつけた人を見かけた場合、電車やバスなどの交通機関内では席を譲ったり、困っているようであれば声をかけるなど、思いやりのある行動をとって欲しいと、東京都福祉保健局が作成したものが、全国の自治体に広まっていきました」

『ヘルプマーク』(東京都福祉保健局ホームページより)
『ヘルプマーク』(東京都福祉保健局ホームページより)

ヘルプマーク、椎名林檎のグッズと酷似

 そんなヘルプマークと椎名林檎が、どうして物議を醸しているのか。

椎名林檎さんが11月30日に発売するニューアルバムの関連グッズが『ヘルプマーク』に酷似しているという批判の声が集まっているんです」(音楽業界関係者)

 確かに、今回のニューアルバム『百薬の長』に関するグッズに『諸々券ケース』というアクリルカードケースがあり、その形状とデザインがヘルプマークにそっくり。

「色や十字ロゴの位置など、遠くからだと見分けがつかないほど似ています。ヘルプマークは、助けが必要な人が目印として身につけるものですから、類似したデザインのグッズが出回ってしまうと、誤認されたり、混乱を招いたりする恐れがある。本来の目的が阻害されるようなことがあったら、大変な問題です」(前出・福祉事業関係者、以下同)

 これにはさすがの林檎ファンもドン引き。ネットではこんな声があがっている。

《決してファッション感覚で作っていいものではないと思う》

《コスプレ感覚で身につける方が増えると、いざというときに命綱になりません》

 椎名サイドはアルバムの特設サイトに《多くの皆さまから頂きましたご意見を踏まえ、弊社内で協議しております》という文章を掲載。今後の対応に関しては《改めてご案内させて頂きます》としている。

 思わぬ形で注目を集めることになったが、ヘルプマークを巡ったトラブルは以前から続いている。

「ヘルプマークは、必要としている人やその家族、支援者などの代理人が、駅や医療機関などの配布場所で口頭による申し出を行うことで、1人1つまでもらうことができるもの。にもかかわらず、数年前から、フリマアプリやオークションサイトに出品する人が後を絶たない。

 ネットで買う人の中には、“配布場所に行くことが身体的に難しい”といった切実な事情がある人もいるようですが、現在は郵送対応も行われています。それでもネットでの出品がなくならないのは“マークのデザインがカワイイ”という単純な理由で購入してしまう人がいるからだと聞きます」

 ネットで調べてみると、オークションサイトでは《匿名発送》《正規品》という文言とともに、10個ものマークを複数出品している人もいた。

椎名林檎さんのグッズにしてもそうだし、安易な考えで購入してしまう人が増えてしまうと、ヘルプマークは意味がなくなってしまうんです。本来の目的のために、正しい行動をとるよう心がけてくれたらなと思います」

 本当に助けを求めている人のため、思いやりを持って行動することを、椎名林檎だって望んでいるはずだろうが……。