舞いあがれ!」の主人公・舞は東大阪の町工場を経営する家に生まれた。工場の経営者とはいえ決して裕福ではない。だが父母共に誠実に働き子育てしている。あるときから舞は原因不明の発熱に悩むようになる。病気を治そうと母めぐみ(永作博美)の故郷・五島列島に向かう。そこで出会った祖母・祥子(高畑淳子)は舞を自分のことは自分でして、言いたいことははっきり言う子に育てようとする。どうやら舞の発熱は他人を気遣うあまり自分の意志を口に出せずストレスがたまりそれが熱として表出しているようなのだ。

 この物語がネットで高評価だった点は、靴を脱いだら揃えること、箸の扱いがちゃんとしていること、食事をしたら食器を自分で洗うというような行儀の良さ(ちなみにこれは浅田芭路が演じる子供時代の話)。

 あるいは、父・浩太(高橋克典)が15年連絡をとっていなかっためぐみに代わってこっそり年賀状を五島列島の祥子に送っていたり、舞の同級生が心配して手紙を紙飛行機にして届けたりする気遣い、五島列島の少年一太の朗らかさ、等々……であった。そして、広い空と海。

視聴していてしんどくならない理由

 豊かな自然と善行に人はホッとする。何もできなくてもできることを探せばいいという懐の大きさで生きとし生けるものを認めるセリフや行動を見て、自分も生きていていいのだ、と支えになる。そんなふうにやさしい世界ではあるが、意外と母親が町工場の仕事も子育ても完璧にやろうとして疲労するあまり、舞の行動を押さえつけてしまっていたり、舞の兄が受験を前に自分のことをもっとかまってほしいとわがままになったり、そのせいで他者に負荷がかかっていることも描いてはいる。

 でもそれが見ていてストレスにならないわけは、それらがあまり好ましくないことだという視点に立っていることと、誰かしらがフォローに入るので、追い詰められることがなく視聴していてしんどくならないからだ。