口を開けば不満と罵りの言葉を向けてくる母親。そんな関係から逃げるように結婚を決めた相手はDV夫──。離婚、再婚と自分の身を守るための“逃避行”から私を救ったのは父親がとった、ある行動だった。
父から冷淡に扱われて毒親に
「母は本来明るい性格なのですが、自分の思いどおりにならないと機嫌が悪くなって暴れます。時にはグラスや皿を床に叩(たた)きつけて壊すなど、ヒステリックに騒いで……」
ファッション関連会社に勤めていた美穂さん(仮名・50歳)は、20年以上前のことをこう振り返る。
「母が父から“ダメな女だ”と冷淡に扱われているのが原因です。特に私がファッションという傍(はた)から見たら華やかな仕事に携わるようになってから、さらにひどくなっていきました」(美穂さん、以下同)
美穂さんがオフの日に、自宅でTシャツに短パンというラフな格好でくつろいでいると母親は「男に媚(こ)びているんだろう」と意地悪そうに絡んできた。
またクライアントからプレゼントされた外国の香水をつけると「ひどい匂いだね。悪い虫がつきそうだよ」と取り上げる。しかし、ちゃっかり母は外出のときにつけていたことも。「ひどい」と抗議すると、「産んでやったんだから感謝しろ」と恩着せがましいことを言ってきたという。
「4歳下の弟は母に溺愛されていたんですが、大学に入学すると家を出て、ひとり暮らしをしてから実家に寄りつきません。もともとふっくらしていた母は、それからどんどん太っていきました。そんな風体で、不機嫌そうに口をとがらせては私に文句ばかり。私も実家を出ようかと考えたこともありました」
だが当時は仕事が忙しく、家を出る準備の時間すらなかったという。
「社会人になってから、給料からお小遣いを引いた20万円を毎月実家に入れていました。でも私が家に入れたお金を、母親がエステやパチンコ、飲食や旅行などに全部使い込んでいたことが後からわかって……。怒りのあまり母親を殴りたくなったのを必死で抑えました。父に相談すると“お金はいらないから貯金しなさい”と言ってくれたので、正直ほっとしましたね」
ところが美穂さんが実家にお金を入れなくなると、母が用意する食事はどんどん粗末になっていった。疲れて帰宅すると、夕食は乾ききったアジの干物と冷たいご飯だけ。抗議すると「文句があるならお金を入れろ」と命じる母。
「もうだめ」と限界を感じた美穂さんはすぐに荷物をまとめてとりあえず短期賃貸マンションへ。約1か月後にワンルームマンションに引っ越しをして念願のひとり暮らしを始めた。しかし──。