テレビとの相性は悪いです
'79年に日劇から漫談家としてデビューしたきみまろさん。しかし、道は険しく、鳴かず飛ばずの時代を過ごす。キャバレーやお祭りなどの司会を10年、演歌歌手の専属司会を20年ほど務め、計30年の潜伏期間を経て、52歳で日の目を見た。
「(ビート)たけしさんをはじめ、ともに芸を磨いた芸人たちがどんどん有名になって、うらやましいなと思いながらテレビを見ていました。ここでやめてしまったら何も残らない。やれるところまでやり続けて終わろう。そうした気持ちが私の原動力でした」
苦労人だからこそ、「ブレイクから20年たちましたけど、あと10年やらないと釣り合わない」と笑い、「満足のいく人生だったかどうかを決めるのは、70代の過ごし方が大きいと思うんです」と続ける。
最新著書『人生は70代で決まる』(幻冬舎新書)には、こう記してある。
“70代というのは多くの方にとって、おそらく元気に過ごせるラストチャンスの10年間です。(中略)満足のいくように生きられれば、死ぬ瞬間に「いい人生だった……」と言えると思うのです”
70代をどう生きるか─。
ところが、きみまろさんの70代は、想定外の幕開けから始まる。新型コロナウイルスの流行によって、ライブの中止や延期という異例の事態が続いたのだ。
「2020年2月の宮古島のライブを最後に、中止、延期の連続です。2年半ほど仕事ができない状況でした」
今現在、状況はようやく好転しつつある。10月は3本、11月は7本のライブが控えているが、コロナ前までは全国を飛び回っていたきみまろさんにとっては物足りないライブ数かもしれない。
「ソーシャルディスタンスで市松模様のような客席、お客様の表情はマスクをされているためわかりづらい。私たち芸人にとっては、とてもやりづらい状況が続いていますね」
コロナは、きみまろさんのライブに、より大きな影響をもたらしている。核となる客層は高齢者だ。そのため、ライブに行くことを控える人も多く、「コロナ禍になってからチケットがなかなか売れない。7~8割埋まってくれれば十分」と神妙な顔になって話す。