コロナ禍で考えた新ネタ漫談
「その一方で、考える時間はたくさんできましたから、漫談の新ネタとしてコロナ禍の夫婦を想定したものも増えました。例えば─。『ねぇ、お父さん、ロックダウンって何?』、『ロックダウンっていったら69歳でダウンすることだろ』……週刊女性さん、ここは笑うところです」
だが、先述したようにライブそのものの数が減ったことで、客前で新ネタを披露する回数も限られた。
「芸は舞台で磨いていくもの。失敗しないといけません。何回か失敗して、笑いを取れるネタだけを選んでいく。ライブや営業が少ないと、芸が磨かれていないですから、そういう意味でもコロナ禍は歯がゆいです」
もうひとつ。中高年に愛を込めつつ、時に過激な毒を発するきみまろさんの漫談は、コンプライアンスの都合上、規制がかかることもあるそうだ。特に、テレビとの相性は悪く、「生放送には絶対に呼ばれません!」と笑う。
「NGと言われた表現の一例を紹介しましょう。『近頃の70代、80代はみんな元気ですよ。なんせ車に乗ってコンビニに突っ込んでいきますから』……テレビではダメだそうです。こんなのもあります。
『ロシアに住んでいる友達に電話したんですが、いくらかけてもつながらない。プーっと聞こえ、チンと切れるだけなんです』……こういうのもダメらしいですね。誰がそんなのを決めるのかなと思ったら、世の中の流れがそうなんだと」
ライブは、きみまろさん自身が考える
対して、「ライブはとてもやりやすい」と声を弾ませる。舞台に上がるとき、きみまろさんは自身が爆笑をさらったときのライブ録音を聞き直して、臨戦態勢に入るという。
「ライブは、私の漫談を見て笑うために、わざわざチケットをお買い求めいただいている。私の漫談って、作家さんがいるわけでもなく、自分ひとりで考えたものです。そのネタに笑ってくださるお客様がいる。この幸せの中で、今日まで私は生かされていますから」
ただ、こうも付言する。
「考えてもみれば、ブレイクしてから20年ということは、あのとき60歳だったお客様は80歳になられている。70歳は90歳に。もう会場に来る元気はないかもしれない(笑)」
漫談さながらのインタビュー。立て板に水ならぬ、立て板に毒である。
こうしたユーモアにあふれた刺激的な笑いを欲しているからだろうか、コロナ以前、きみまろさんのライブには30代、40代の客層が増えていたそうだ。
それを裏付けるように、先日、きみまろさんは綾小路翔がメインボーカルを務めるロックバンド・氣志團が主催する『氣志團万博』に登場した。綾小路一門(!?)のそろい踏みだ。きみまろさんの漫談に、ドッと会場は沸いた。
「同じ綾小路を名乗る面白い人がいるなぁと気になってはいたのですが、翔さんにはとてもいい経験をさせてもらいました。若い人にもウケると、『まだまだいけるじゃないか』と勇気をいただいた気持ちになるんです」