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《宮本亞門は知っている》
'90年代、ネスカフェゴールドブレンドのCMで“違いのわかる男”として名を広めた演出家の宮本亞門(64)。
これまで120本以上の舞台作品を担当してきた彼の幼少時代は、決して順風満帆といえるものではなかった。
暗い幼少時代、心を開けた場所は
「とても暗い幼年期でした。人見知りで、幼稚園、小学校と人の目を見るのが怖く、社会の中で生きていくことに対してまったく自信がなかったんです。両親が劇場の前にある喫茶店を営んでいましたが、演劇という華やかな人がたくさんいるような場所に、自分が足を踏み入れることは無理だなと」
しかし、劇団のダンサーでもあった母親の影響で、劇場へと足を運ぶようになった。
「何度も観劇しているうちに、演劇には現実を忘れられる瞬間や未来を語ってくれる希望もあることに気づいて、いつのまにか劇場が僕にとって聖域のような場所になったんです。ここにいれば、自分の心を開くことができると。
高校生のころはひきこもっていた時期もありましたが、そのときに映画を見たりレコードを聴いたりして、この素晴らしい世界を自分の手で創り出したいという思いが芽生えて演出家を志すようになりました。周りからは“おまえこそ、気が弱くていちばん演出家に向いてないタイプだ”と言われましたけどね」