目次
Page 1
ー 人には話しづらい死別の苦しみ
Page 2
ー ひとりでいる時間がとてつもなくつらい
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ー 共感し寄り添う友人が見つかった ー 日帰りイベントを外に出るきっかけに
Page 4
ー ひとり世帯になり経済的な問題も

 総務省の統計では高齢社会に伴い、ここ25年の間で配偶者を亡くした「没イチ」人口は1・5倍に。決して他人事ではない「ひとり老後」のしのぎ方、生の声をお届けしよう。

人には話しづらい死別の苦しみ

 最近では、配偶者と死別した人を、離婚経験者を意味する「バツイチ」になぞらえて、「没イチ」と呼ぶ言葉も登場し、注目されている。その背景には、高齢化が進み、ひとり残されてからの人生が長くなったという現実がある。平成27年の国勢調査によると、40歳以上の「没イチ」人口は全国で958万人。その8割が女性だ。

「“定年後は夫婦でゆっくり旅でもしよう”という何げない会話が、叶わぬ夢になってしまった」、「夫の遺品を目にするたびに涙が止まらない……」

 神奈川県に本部を置く配偶者と死別した人の交流会「気ままサロン」の会報には、全国の会員から寄せられた切実な言葉が綴られている。サロンの代表を務め、自身も14年前に夫を亡くした伊藤京子さんは、「伴侶を失ったつらさを口に出せず、ひきこもってしまう人は多い」と話す。

桜の季節に夫を亡くしたある会員さんは、その後の数年間、桜の花がモノクロに見えていたと話していました。キンモクセイの香りがわからなかったという方も。睡眠導入剤や精神安定剤を手放せない人も少なくありません」(京子さん、以下敬称略)

「没イチ」とは?

「没イチ」という言葉は、第一生命経済研究所の主席研究員だった小谷みどり氏が死別経験をもとに著した著書『没イチ』が、注目されるきっかけになった。軽い響きに抵抗感を持つ当事者もいる一方、死別後の問題に社会の目が向く契機となり、死別を前向きに捉えようとする言葉として使われるようにもなった。