共感し寄り添う友人が見つかった
反対に言われてつらかった言葉もある。心の整理がついていないのに「もうひと花咲かせられるわよ」「いい人紹介するから」などと言われたり、見合い写真を送りつけられた人もいる。励ますつもりで悪意はないとわかっていても、失意の底にいる身には到底受け入れられない。外では明るく振る舞っていても、自死を選ぶ人もいるのだ。
「サロンでは、ふと私が“寂しいのよ”とつぶやくと、“寂しいよね”と返ってくる。それでいいんです。表向きは人に心配をかけまいと明るく振る舞っていても、“寂しい”とこぼせる場があることが気持ちをラクにしてくれました」(京子)
京子さんは和江さんと入会後に知り合って以降、10年ほどの付き合い。会を通じ何でも話せる親友ができたと喜ぶ。
また、「書いて気持ちを表すこと」も大切にしてきた。心の整理になり、面と向かっては話せない人もいるからだ。サロンの会報には闘病や死別時の心境などを綴った手記も多い。読む人も「自分だけではない」と共感できる場にもなっている。
日帰りイベントを外に出るきっかけに
一方でイベントの開催にも力を入れてきた。そこには、「ひとりでも独りぼっちでなく」という、創設以来のコンセプトが受け継がれている。
「つらい話を吐露することも必要だけれど、そればかりではつらさが反復されてしまい、前に進めません」(京子)
思いを語ったり、イベントを楽しんだりできる“没イチの居場所”をつくってきた。
ホームページや会報には、何げない日常の雑感や趣味の話を投稿する人も多い。イベントは日帰りの小旅行や食事会、カラオケなどを企画。コロナ禍ではZOOMを使い、オンラインで交流を続けた。
「家でひとりでいると、どうしてもくよくよしてしまう。そこから一歩踏み出すことが難しいのですが、人と接することがきっかけになります。だから私は、ひきこもってしまう人には、“とにかく靴を履いて外に出て!”と言うんです」(京子)
泣いてばかりだった人も、イベントに参加するうちに、徐々に表情が変わる。
「泣いたほうがいいんです。涙が枯れるまで泣く! そして“時間薬”といいますが、時間も必要です。人によりますが、三回忌を迎えるくらいになると、笑顔が増えてくるように思います」(京子)
「気持ち的には“卒業”といえる方もいます。私もそう。やはり趣味や暮らしを楽しめるようになるといいですね。登山を始めて、みるみるアクティブになり、再婚した男性もいます」(和江)