足のむくみや血栓の予防にも効果が
「股関節疾患だけでなく整形外科の疾患全般に当てはまりますが、安静だけでは回復は望めません。痛みがあるからとじっとしているだけでは、機能は衰える一方。無理のない範囲で、少しずつ患部を動かし刺激を与えることが重要です。貧乏ゆすりの動きも、股関節の機能改善のためのちょうどいい刺激となっている可能性は十分にあります」
女性の悩みとして多く見られる足のむくみにも、貧乏ゆすりが効果的であることがわかっている。
ふくらはぎの筋肉は、下半身の血液を心臓まで押し戻すポンプの役割を果たしている。そのため「第2の心臓」とも呼ばれるが、筋肉がうまく機能しないと血流が滞り、ポンプの働きが低下してしまう。これが足のむくみの一因となる。
「貧乏ゆすりでふくらはぎの筋肉を効率よく動かせば、滞っていた血流やリンパの流れが改善され、むくみの解消につながります。エコノミー症候群を防ぐ運動としてもおすすめです」
飛行機などの狭い空間で長時間同じ姿勢のまま過ごすと、血行不良となり、足の静脈に血栓ができやすくなる危険がある。最近では、JALの国内線ファーストクラスにフットレストのバイブレーション機能が登場し、話題となった。
「バイブレーションによる他動的な力でも、血栓予防の効果は期待できるでしょう。しかし自分の力で行う貧乏ゆすりのほうが、ファーストクラスの設備より効果が高いかもしれません」
とはいえ、貧乏ゆすりはもともと意識して行うものではない。本人も気づかないケースがほとんどで、イライラしているときなどについ無意識にやってしまいがちだ。
「あくびやくしゃみと同じで、人間の生理反応のひとつ。しかし貧乏ゆすりだけは、一定のリズムを刻み続ける動作ですね。このような動きは、幸せホルモンといわれるセロトニンの分泌を促進する効果もあるといわれています」
貧乏ゆすりは、ストレスによって高ぶった気持ちを静めるための、人間の防御反応のひとつでもあるのだ。
「例えば更年期障害などで不安な気持ちが続くとき、あえて貧乏ゆすりをしてみるのもいいでしょう。副交感神経が優位になり、リラックス効果が得られます。深呼吸にも同じように、自律神経を整える働きがあります。ゆっくりと、長く息を吐くよう心がけましょう」
意識的な貧乏ゆすりは、1日にどのくらい行うのがベストなのか。
「“1日何分”など深く考えず、まずは気がついたときにやってみるだけでいいんです。30秒でも3分でもOK。無意識のうちにストップしてしまっても大丈夫です。片足ずつでもかまいませんが、両足を一緒に動かすほうがやりやすく、効率的ですね」