神経と筋肉の伝達速度を上げると─
時間も回数も問わないが、唯一の留意点は、できるだけ速く小刻みに足を動かすことだ。
「できる範囲で構いませんので、なるべく速く動かすことを心がけましょう。クリニックでも、患者さんに毎日の宿題として貧乏ゆすりをすすめることもあります。最初はゆっくりとしかできなかった高齢の方も、だんだんと速く足を動かせるようになるんです」
足を動かすためには、「足を動かせ」との脳からの命令を、神経を通じて足の筋肉に伝える必要がある。毎日少しずつでも貧乏ゆすりのスピードアップを図ることで、この神経と筋肉の伝達速度を高められるという。
「インターネットの回線速度を、ADSLから光に変えよう!と言えばわかりやすいでしょうか(笑)。貧乏ゆすりのスピードアップで素早い足の動きが獲得できれば、瞬発能力も高められます。毎日の小さな積み重ねが、高齢者のケガ予防などにもつながればと考えています」
貧乏ゆすりだけではちょっと物足りない、という人には、早歩きがおすすめとのこと。
「毎日でなくても大丈夫です。1回につき7000歩ほどのウォーキングを目安に、そのうち20分程度は早歩きをしてみましょう。会話をしながら歩いたときに、やや息切れするぐらいの速度がベストです」
貧乏ゆすりも早歩きも、共に身体の筋肉量を減らすことなく、関節を痛めるリスクも低く、安全に運動機能を高められることがメリットだ。しかも、いくつになっても効果が期待できるのがうれしい。
「30歳を過ぎると、筋肉量は少しずつ落ちていきます。健康寿命を延ばすには、年齢を重ねてもなるべく自分の足で歩き、移動能力をしっかり維持すること。貧乏ゆすりはそのための第一歩です」
貧乏ゆすりは、もはや奇跡のエクササイズ!? 道具も使わずお金もかけず、どこでもできるこの運動。ネガティブイメージを払拭できる日も近そうだ。
もっと詳しく知りたい人は『貧乏ゆすりでゆる体活』で!
『貧乏ゆすりでゆる体活』(二見書房刊)いろいろな“ゆすり方”のエクササイズ方法や、身体を内側から変える湯せん肉のレシピなど、健康寿命を延ばすポイントを吉原先生が解説。
<取材・文/植木淳子>