婚約詐欺を立証して自分の心を救い出す

既婚者が登録していたり、サイトが仕込んだ“サクラ”も多いといわれるマッチングアプリ。その判別は難しく…(※写真はイメージです)
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 すっかりだまされていたことがわかった亜由奈さんはがっくりと肩を落とした。

「探偵さんにこれからどうしますかと尋ねられました。私は泣き寝入りしたくないと伝えると、探偵さんは“依頼者の安全を一番に考えることが僕たちの使命です”と、私が岩本の奥さんに訴えられない方法を教えてくれたんです」

 亜由奈さんも妻もだましていた岩本が悪いのは一目瞭然だが、妻側から見たら夫が独身を装っていたものの、現実的には亜由奈さんが夫と不倫をしていたということになる。そのため亜由奈さんが不貞行為で訴えられる可能性があるというのだ。

「私は悪くないのに、どうして岩本の妻に訴えられて慰謝料を払わなければならないんだろう。慰謝料を私に払うのは岩本なのに。とても理不尽な気がしました」

 だがそこに法律の壁があるため、亜由奈さんは探偵のアドバイスどおりに、まず岩本の婚約詐欺を証明することにしたという。

「次のデートで岩本に結婚の意思があるかどうかを確認しました。彼が“ある”と言った証言をこっそり録音しました。そして結婚式の時期などを誘導尋問したんです。それも録音しました。また指輪もそのころまでに用意してくれることを約束させたんです」

 探偵は岩本の証言を文章にして、内容証明を岩本宛てに送ることを提案。自宅に送った内容証明を見た妻が、岩本の婚約詐欺を知ることになった。

「そのころには、たとえ裁判になっても岩本の罪を公表して、この忌まわしい婚約詐欺に決着をつけようと決めていました。ここまで強くなれたのは、探偵さんに動いてもらっている間、自分自身の心をちゃんと救済してあげることが、将来の幸せにつながると思うようになったからです」

 だが互いに弁護士を立てると和解という方向に流れ、岩本側が慰謝料120万円を払った。相場は80万円から300万円だという。岩本は離婚しなかった。

 慰謝料をもらったものの亜由奈さんはどうしても腑に落ちないことがあった。岩本は本当に自分を最後までだませると思っていたのだろうか。

「探偵さんいわく、だませると高をくくっていたのだろうと。一方で、妻にバレてしまった夫の半分ぐらいは、妻も子どもも捨てて、新しい女性と共に生きるという選択をしているそうです」

 子どもが小さいうちは子どものために離婚しない選択をする夫が多い。だが子どもが中学生以上になると養育費が少なくなるせいか、財産もすべて妻に与えて家を出る夫が半分ぐらいいるという。そんな男性の身勝手な恋愛願望を満たすために、結婚アプリがあるのではない─。

<取材・文/夏目かをる>