がんになりやすい食生活が蔓延

 日本で近年、欧米型のがんである大腸がんや乳がん、前立腺がんなどが増えている背景には、肉類や油脂を多く含む欧米型の食事があると、済陽先生は警告する。

「血糖値を急上昇させる白砂糖は、がんのリスクを高めます。白米や精製された小麦で作られたパンなどは栄養的には問題ないのですが、酵素が除かれていて代謝しにくい。それぞれ黒砂糖やきび糖、玄米、全粒粉のパンに置きかえるのが望ましいです」

 油脂は酸化しにくいものを選ぼう。マーガリンに含まれるトランス脂肪酸は前出のLDLコレステロールを増やし、免疫力を低下させる。

「私の食事指導では、限りなく無塩に近づけること、動物性タンパク質を避ける、新鮮な野菜と果物をたっぷりとることを原則にしています。加工食品は塩分が多いので避けてほしいですね

 がんを発症すると、病院での治療の要(かなめ)は「手術、薬物療法、放射線療法」の3大療法になる。これらの治療に加えて、健康食品やサプリメントを利用する人もいるようだが、効果があると科学的に実証されたものはまだない。

「普段の食事内容を変えることで、がんを抑制したり予防したりすることが可能です」

 済陽先生は長年、がんの治療と並行して、患者に食事対策を指導してきた。

がんの治療と同時に食事対策を行うことで、ステージ3~4の進行がんや再発がんを消失させることができると考えています。治療実績をまとめたところ、有効率は68%。この食事対策は、がんの予防にも役に立ちます」

 代謝を整え、体内の免疫力の底上げをすることが食事療法の目的だと話す。

「闘病中の方は半年から1年、食事療法を徹底して実践すると体質改善がかなり進み、体調も好転します」

がん体質を改善する5つの抗がん食とは

「今日の食生活を振り返ってみてください。肉食が多く、野菜が少ない人は、身体が“がん体質”になっている可能性があります」

 野菜の摂取量が減ったことも、日本人の食事の大きな変化。かつてはアメリカ人と比べ、日本人は野菜を多く食べてきたが、1980年代から摂取量が減り、'90年代には逆転。1人あたりの摂取量はアメリカ人のほうが多くなっている。(※3)

「日米のがんの死亡率の推移を見ると、最初はアメリカ人より死亡率が低かったものの、'90年代に逆転し、今では日本人の死亡率のほうが高い。(※4)がん予防のためには野菜の摂取が大切であることを示しています。抗酸化物質やカリウムなどを補給するためにも新鮮な野菜と果物はたっぷりとりましょう」

 大量に食べるのは大変なので、野菜ジュースを毎日作って飲むことを推奨している。

 そのほかに済陽先生が食べている「抗がん食」を教えてもらった。

「白米を食べている人はまず週1~2回、玄米か胚芽米などにかえてみましょう。ビタミンや食物繊維、身体の代謝を整える成分が豊富な豆類や豆腐や納豆などの大豆加工食品、いも類を積極的にとること。大豆に含まれるイソフラボンにはがんを抑制する作用もあります」

 免疫力をアップさせる海藻やきのこも毎日とりたい食材。

「ヨーグルトはがん予防のためなら1日300gを目安に。砂糖が入っていないプレーンヨーグルトを選んで」

 細胞のエネルギー産生に必要なクエン酸や抗酸化物質が豊富なレモンは、1日2個を目安に。はちみつはビタミンやミネラル、免疫増強に役立つ花粉を含むので大さじ2杯を取り入れたい。

「調理には酸化しにくいオリーブ油、ごま油、なたね油などを少量使うようにしましょう。揚げものが好きな人は月1~2回など、食べる回数に制限をかけて」

 肉を食べすぎたり、お酒を飲んだ翌日は食事をリセット。

「『あきらめずに長く続ける』とがんが予防でき、再発も防げます」

※1 NCI(米国国立がん研究所)報告 ※2 ACS(米国がん協会)2021報告

※3 FAOSTAT資料より ※4 前出ACS報告と厚生労働省「人口動態統計」を比較