気遣いのつもりが厄介な客に
空いた皿やグラスを厨房まで運んでくる客も厄介だと和歌子さんはため息をついた。
「気遣ってくれているのでしょうが、洗い物が間に合わず、シンクに空きがないため下げられないこともあるんです。それにほかのお客さんに“この店は客まで使う”などの印象を与えかねないので、やめてほしいです」
皿やグラスを落として割られたり、運んでいる最中に転んでケガをされたりでもしたらたまったもんじゃない。
ただ、「いちばん嫌だ」と和歌子さんが訴えるのは運んだ飲食物を店員のお盆の上から勝手に取る客だ。実はこれはかなり危険な行為だとか。
「急に皿やグラスを取られるとお盆のバランスが崩れるので、怖くて……。“私が置きますから大丈夫ですよ”とやんわりと断りますが、それでも取ろうとする人がいます」
こぼれたしょうゆや酒をおしぼりで拭いたり、最後に机まで全部拭いて帰る人もいるが、それも遠慮してほしいと念を押す。
「最後にきちんと掃除をするので拭いていただく必要はありません。それに使い捨てのおしぼりならまだいいのですが、布のおしぼりだとシミがつくと業者に戻すときにクリーニング代が余計にかかります。おしぼりにゴミを包んでいる人もいますが、それも困る。いちいちおしぼりを全部開いてチェックしないといけない。こぼしたりして拭きたいものがあったら店員を呼んでください。ふきんをもって飛んでいきますから」
良かれと思ってやったことが店員の手間だけではなく、店の経費を圧迫することにもなりかねない。
こうした行為をしがちなのが、一見すると“気遣い”ができる人。飲みの席ではいいのかもしれないが、飲食店にとっては「要注意人物」なのだ。
「いちいち注文を言いにくる人もいますが、大きなお店やお客さんが多いときはどのテーブルなのかわからないので、結局はその方のテーブルを確認する手間が生じます。お店側への配慮のつもりかもしれませんが、こちらは飲食店のプロ。接客や片づけは任せてください」