hideは「事あるごとにケンカしていた」

 それから30年以上たつが、今も多くのファンがレッドシューズを訪れる。

「ファンは、ここが聖地みたいに思っている。今も20代の若者が“尾崎、好きなんです”って言って来てくれる。尾崎ファンが店を貸し切りにして集ったこともありました。彼らの思いに応えるためにも、この場所は守っていかなければと思っています」

 hideは、大きなハットをかぶり、サングラスをして、大声で怒鳴っているのを見たのが最初だった。

「事あるごとにケンカしていた。そういう時代だったんです。みんな血気盛んで、音楽業界は盛り上がっていた。バンド自体も序列が厳しくて、後輩バンドを呼びつけては蹴飛ばす人もいて(笑)」

 ビジュアル系バンドには武勇伝が語り継がれる半面、アイドルの追っかけのようなファンも少なくなかった。

ぬいぐるみを抱えた小学生の女の子が店に来て、困ったこともありました。もちろん未成年はバーに入れませんが。hideが店にいると、ファンの間で情報が回って、西麻布に集まるんです。スマホはない時代ですが、気がつけばあちこちからファンが集まって。静かに飲みたい常連からは文句を言われましたね

 苦労はあったが、hideと過ごす時間は楽しかった。

シーナ&ロケッツの2人を紹介したら大興奮。“スゲー! シーナと鮎川だ!”って騒いでいました。自分だって有名なミュージシャンだろうって思いましたが(笑)」

 門野さんは一時、レッドシューズを離れて近くに別のバーをオープン。すぐにhideがその店にやってきた。

「場所を伝えていなかったのに、探して来てくれたんです。うれしかったですね。毎日、入り浸っていました。相変わらずケンカしてたけど」