相続トラブルの2大キーワードは「きょうだい間の共有不足」と「分けられない」不動産
まず聞き方から。課題は「親の全財産を詳しく把握すること」と曽根さん。直接的に尋ねるのではなく、「老後の生活費は足りている?困っていない?」といった感じで切り出し、順に掘り下げていく。
「老後生活の収支を通じて金融資産、不動産、生命保険などの代表的な財産が見えてくるでしょう。金融資産で第一に確認すべきは銀行預金。親の銀行口座がわからなければ万が一のときに葬儀費用などを引き出せません。また、親が認知症を発症した場合には本人確認ができず引き出しできなくなってしまいます。いずれにせよ、早めの確認が重要なわけです」
銀行口座は複数持っていることが多いが、中には親が存在を忘れている口座もある。10年以上取引がなかったら「休眠口座」とされ、口座のお金は国に活用されてしまう。ソンしないためには年金受給口座だけ残して、他は解約することも検討したい。
「不動産は、実家が持ち家ならすぐ財産と認識できますよね。ただ実家以外に不動産を所有しているケースも少なくないので、確認を忘れずに」
節税対策には保険も要チェック
生命保険は親が加入している保険の種類と保険金の受取人を要チェック。その内容によって相続税の節税効果の有無が決まるからだ。
「終身保険など死亡保険金が出るタイプで、子どもなど相続人の受け取りがあれば、相続人1人に対して500万円まで相続税の非課税枠が適用されます。該当しない場合は受取人を孫から子に変更するなど、契約の見直しを検討しましょう」
一方、老親の中には現金を封筒などに入れて家の中に隠し、そのまま忘れてしまう人もいる。記憶があるうちに実家に眠るお金の在りかを明らかにしておこう。
「借金の確認も重要です。相続ではプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も引き継ぐことになります。借金があった場合には相続以前に子どもが補塡(ほてん)する選択肢もありますが、相続開始を知った日から3か月以内であれば相続放棄も可能です」
以上のようにヒアリングした親の財産情報は、親子のエンディングノートに記載するのがおすすめ。
これでいざというときに困らずにすむが、まだ安心なわけではない。親は財産をどうしたいのか、どのように兄弟姉妹間で分けたらいいのか、話し合いを必要とする次のステップへ進む。
「まず実家の扱いを親に決めてもらいます」
と曽根さん。
「分割しにくい遺産ほど相続でもめやすい。不動産はその代表格です。だからこそ、親の希望を明確に聞いておかなければなりません。例えば、実家で親と長女が同居していたら『実家は長女に、次女、三女へは同等の預金を与える』、実家が空き家になりそうなら『実家は売却して姉妹で3等分する』などと今から方針を決めておきましょう」
このとき重要なのは、話し合いをするときから包み隠さずオープンにすること。
「親と長女だけで話し合いをして、次女、三女はその席にいないなど、秘密裏に進めると後でトラブルになるのは目に見えています。親とは兄弟姉妹そろって話し合い、誰か1人でも不公平を感じるようなら折り合いをつけておくのが理想です」
未知の相続人が存在する場合も
一方、相続人は自分の知る人だけとは限らない。親の財産をもらう権利を持つ“未知の相続人”がいることも考えられるという。
「例えば親に離婚歴があった場合、異父・異母の子どもも相続人となります。また養子縁組した人がいる場合も同様です。その存在を把握できていないと、相続のときにトラブルに発展しかねません。親に確認しづらい場合は戸籍を取り寄せて調べるのもひとつの策といえます」
話し合いや調査が終わったら、あとは確定した内容を遺言書として親に遺してもらうのみ。
「遺言書があれば、優先され、その内容どおりに相続はスムーズに進むのです」