安すぎる示談金の“真意”
五ノ井さんの場合、まず日常的に受けていた言葉でのセクハラについて、
「“おっぱい大きいね”や“しゃぶってよ”と声をかけることは、典型的なセクハラ行為に該当します。仮に身体的な接触を伴わずとも、継続的にセクハラ的な言葉を投げかけられ、休職や退職を余儀なくされている場合には、50万円~100万円ほどが妥当です」(正木弁護士、以下同)
今回、再捜査中である訓練中の性被害については、
「胸を揉まれ、頬にキスされ、下着の上から相手の股間を触らされる行為や、両脚を広げて、股間に自分の陰部をこすりつけて腰を振りながら喘ぐ行為などは、強制わいせつ罪に該当するため刑事処罰の対象となります。行為の悪質性が非常に高いので、100万円~200万円ほどが妥当であると思われます」
それではなぜ、加害者側は“個人責任を問われるか疑問”として、相場よりも低い“30万円”を提示したのか。
「この発言は簡単に言えば、“被害の補填をする義務はないのでそれはしないけれど、謝罪の意思は表したいから気持ちを示します”ということだと思います」
公務員の不法行為は個人の賠償責任がない!?
今回の案件は『国家賠償請求』に該当する可能性があるそうだ。
「判例上、国家賠償法の適用を受ける行為については国が賠償責任を負うべきで、加害者である公務員個人は民法上の賠償責任を負わないこととされています。
理由としては、公務執行の萎縮の防止や、国家賠償により金銭的な補填はされるであろうこと、当該公務員個人には国自身の自浄作用として懲戒処分等のペナルティが想定されていることなどが理由とされています。
加害者の弁護士は、本来であれば加害者3名は、個人的な賠償責任を負っていないことを前提に、上記の発言をしたものと思われますが、そのことと謝罪のためにお金を払うということはまったく別の話です」
五ノ井さんは会見で、
「加害行為をどう受け止め、どのように責任を取るのか。代理人を通して改めて質問していて、回答を待っています。その結果によっては、民事訴訟や国家賠償訴訟を検討したいと思っています」
と語っていた。賠償責任がなくとも、加害者は五ノ井さんを傷つけたことに変わりはない。今度こそ、誠意のある対応をしてほしいが――。
お話を伺ったのは……