大会前、和田は“学生最強ランナー”駒澤の田澤廉選手(4年)と青学のエース・近藤幸太郎選手(4年)による“花の2区”エース対決も見どころに挙げていた。

本当に歴史に残る名勝負を演出してくれました。今まで後れを取っていた近藤選手が、最後の舞台で田澤選手に追いつき、そして同時にタスキリレーをした場面。駅伝ファンは相当興奮したと思います。もちろん、中央大の吉居大和選手(3年)のねばりの力走もありました。さらに4区で、一度は引き離された青学の太田蒼生選手(2年)が、駒澤の鈴木芽吹選手(3年)と競り合った展開には、誰もがワクワクしたんじゃないでしょうか?」

新興校と伝統校の戦力が拮抗

 2位には中央大が食い込み、22年ぶりの表彰台。

「藤原(正和)監督の采配、戦術が本当にうまくいったという感じですね。駅伝で大事な流れをつかむため、前半を上位で進めていけるよう、さらに仮に順位を落とす区間があってもすぐ次の区間で切り替えられるような絶妙な区間配置を組んでいました」

 2区の吉居大和選手、3区の中野翔太選手(3年)の連続区間賞で完全に波に乗った。

「復路も追いかける展開で苦しい部分もあったでしょうが、離されずに食らいついてしっかり結果を出しました。来年以降、優勝を狙ってくるチームになる。そんな力をつけてきていると感じました」

 また和田は今大会での区間新記録の数にも注目。

第99回箱根駅伝のスタート 撮影/北村史成
第99回箱根駅伝のスタート 撮影/北村史成
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「2つだけでしたよね。東京国際大のヴィンセント選手(4年)は、走れば区間新記録になるという側面がありますので、それを抜いたら5区の城西大・山本唯翔選手(3年)のみ。元日のニューイヤー駅伝でも同じことが言えますが、厚底シューズが誕生したことで、ここ数年は区間新記録ラッシュでした。

 それが今年になって天井が見え始めたというか、落ち着いた感じが出てきました。区間新記録という言葉がずいぶん安っぽくなりつつあったので、ようやく記録を塗り替えることの本当の凄さを実感してもらえるようになっていく気がします」

 改めて、今大会を一言で表すならば?

「“夜明け前”じゃないですか? 新興校と伝統校の戦力がかなり拮抗し始めています。わりとここ最近強くなったチームが予選会に落ちていったり、古豪がしっかりと復活してきたり。そんな構図が見え隠れしている気がします。だから来年以降の勢力図がちょっと読めないし、優勝予想もしづらい。もう事前のデータだけでははかりきれない時代になってきているのかもしれません。今年はそんな新時代を迎えるひとつ手前、だから“夜明け前”という感じの大会だったように思います」

 来年の話をすると鬼が笑うかもしれないが、次は記念すべき100回大会。秋に行われる予選会は関東の大学だけではなく、全国の大学に参加資格が与えられる。そして関東学生連合は編成されない。そんな新時代にどんなドラマが展開されるのか……早くも来年の号砲が待ち遠しい。


取材・文/荒井早苗