食い違う両者の見解

「B氏が運営するすべての『乃が美』店舗を 2022年 6 月 30 日に閉店する旨の事前通知を受けておりましたが、6 月 28 日に、B氏側より『乃が美』の旧店舗に新たなパン店を開店するとのプレスリリースが配信されました。これを受け、6月 30 日に弊社従業員が店舗視察を行ったところ、店舗が閉店しているのを確認しました。さらに、とある店舗では、営業時間外に弊社従業員が扉を開けたところ、店内から甘い香りがしてきました。出てきたスタッフに声を掛けたところ、B氏の親族が経営する惣菜店のスタッフであるとの回答を得ました。

 弊社の食パンは卵不使用をうたっており、食パンの製造ラインで卵を使用したスイーツが製造されているとすると、卵アレルギーによる人命に関わる事態になりかねません。そのため店舗営業を差し止める必要があると判断し、営業差止の仮処分を申し立て認められました。

 弊社としては、B氏の競業避止義務違反は許しがたい行為であると考えていたうえ、他のFCオーナーからもB氏の違反行為に“厳しく対処すべきではないか”との意見が出されたこともあり、提訴に至りました

 とのことだった。

『乃が美』の公式ホームページには、創業時の原点について記されているが……
『乃が美』の公式ホームページには、創業時の原点について記されているが……
【写真】ドロ沼裁判に発展、今では悲しく響く「創業時の原点」ほか

 B氏が経営していた『乃が美』の店舗で、“許可なく”惣菜店で販売する商品を製造していたというのであれば問題だが……。これについて改めてB氏に話を聞くと、

「まったく事実と違います。問題があったと本部がいうのは、パンの製造工場つき店舗なのですが、パンの製造量が少なすぎて採算が合わず、稼働を止めていたのです。ただ、稼働を止めても店舗の家賃はかかります。工場の再稼働も見込めなかったため、別の惣菜店に工場を貸していました。これは事前に『乃が美』にキチンと報告していたので、本部はそのことを知っていました。本部にはすぐわかることなので、私が隠すメリットがありません」

 さらには、ほかの点についても言及する。

「CM料についても、オーナー会議で費用の総額を直営店含む全店舗で均等負担すると言うので、総額はいくらなのか聞いたのですが、“情報はいっさい出せない”と言うだけ。みんな“おかしい”と思いつつも、本部を恐れて何も言えない状況がありました。複数のオーナーからは“今まで何も言えなかったけど、ハッキリ言ってくれてありがとう”と感謝されたぐらいです。本部に意見を言う私は、オーナー会議から排除されて、『はなれの会』にも入れてもらえませんでした。本部が言うことはウソばかりですよ」

『乃が美』のホームページには、創業時のこんな思いが記されている。

《どうせなら多くの人に愛されて、歴史に残る日本一のものをつくりたい》

 いまこそ、原点に立ち返る必要があるのではないか――。