2021年3月、夫妻はアメリカの大物司会者オプラ・ウィンフリーによるインタビュー番組に出演し、メーガン妃が長男の妊娠中に王室のメンバーから人種差別的扱いを受けたと爆弾発言。イギリスでは「人種差別的」と見なされるのはタブー中のタブーだ。

 さらに昨年12月には、ネットフリックスで夫妻のドキュメンタリー番組「ハリー&メーガン」の配信が始まった。この中で夫妻はウィリアム王子が夫妻の今後を考える家族会議の場で「大声で怒鳴った」と主張。大衆紙メディアの執拗な報道がイギリスを離れる大きな理由だったことも明らかにした。

「もう帰ってくるな」という反応も

 筆者はドキュメンタリー配信後、イギリスのコメンテーターや一般市民の反応を観察した。市民の中にはヘンリー王子夫妻のファン層がいて、「素敵なカップル」とほめる人もいたが、専門家・コメンテーターのほとんどは「新しい材料がない」「これまでの繰り返し」「もう帰ってくるな」などの否定的な反応だった。

 今回の本の発売前に掲載された各紙の関連記事についた読者によるコメント欄を読むと、「もう黙っていてほしい」「イギリスに戻ってこないで」「兄夫婦よりも小さい部屋を与えられたって?億万長者の暮らしをして、よく言うよな」など相当辛辣だ。

 王室専門家たちはもっと慎重だ。

 ウィリアムとヘンリー兄弟の本を書いた王室伝記家ロバート・レイシーは、こういう。ヘンリー王子は「王室を批判する暴露本を出したが、王室自体よりも自分自身の評判を傷つけることになったのではないか」(『フィナンシャル・タイムズ』、1月6日付)。「肝心なのは国王がどう振る舞うか。その家族の個人的な暴露はその人を貶める行為と解釈される」。

 エリザベス女王の伝記を出した作家ウィリアム・ショークロスは「軍人として尊敬された人物が書いた本とは思えない」「イギリスの王室は国が誇る存在だ。ヘンリー王子夫妻がこれほど残酷に王室に損害を与えるとは」(同記事)と信じられない様子だ。