腸の健康を保ち長寿を実現
松生先生のクリニックが開設している「便秘外来」を訪れる患者の中には、70代以上の人も少なくない。
「高齢になってから便秘に悩むようになった患者さんは多く、毎日、下剤を服用しないと排便ができないという方も多数います。下剤を連用するとさらに腸の働きが悪くなり、下剤に依存するようになります。
私はこのような状態を“下剤依存症”と呼んでいます。下剤依存症を放置しておくと、自力で排便できなくなる、下痢、抑うつ感などさまざまな症状を引き起こします。
下剤の服用量が多い場合は、便秘外来や消化器内科、胃腸科、大腸・肛門科などを一度、受診することをおすすめします」
松生先生は、便秘は今後の健康状態に大きく関わっていくと語る。
「便秘は万病のもとといわれています。例えば、若いころから便秘を繰り返していたり、慢性的に便秘の人は大腸がんのリスクが上がるという報告があります。
また、高齢の慢性便秘症の患者さんの中には、腸のぜん動運動が極端に低下している“結腸無力症”の方もいます。さらに、便秘は肌のくすみや乾燥などの原因になることもありますから、見た目も老化してしまいます」
「2025年には5人に1人が認知症になるといわれていますが、認知症になると自分の排便を記憶することができません。その結果、便秘が悪化して腸閉塞や直腸潰瘍といった病気を引き起こしてしまう可能性もあります」
「長寿=腸寿」と松生先生。健康に長生きするためには、腸の老化と便秘を防ぐことがいちばんの近道。
「便秘は腸の老化のひとつのサインです。日常生活や食生活に気をつけて便秘を改善して腸の健康を保ち、さらに無理をせずに楽しい日々を過ごせば、100歳まで生きることも、きっと不可能ではありません」
自分の腸の状態を知るためのCHECK List
□下剤を服用しないと排便が3~4日に1回しかない
□便の状態が常に硬い。コロコロうんちだ
□排便ができないとお腹が張ってくる
□運動不足だ
□食事の回数は1日1~2回、食事量も少ない
□便意があっても、トイレに行くのが面倒で我慢してしまうことがある
□下剤を使わない、または下剤を使うようになって1年以内である
□自然に便意を催すことがない
□下剤を服用するのは週に1回程度だ
□下剤を服用しないと、まったく排便ができない
□下剤を服用して1年以上5年未満である
□おならが以前に比べて異常に臭くなった
□毎日下剤を服用している
□下剤を飲むときは、指定された服用量よりも多い
□下剤を飲むときは、指定された服用量の倍以上を飲む
□体重がいちばん多かった時期に比べて10kg以上減っている
□下剤を5年以上続けて飲んでいる