子育て全般に通じる考え方

 この『待ちよみ』の考え方は子育て全般に通じる。

「親は害を与えるものから子どもを守らなければなりません。しかし、あとは手を出さず、子どもがしたいことを子どものペースでやるのを見守り、『これして』と子どもが望めば応じればいいだけ。このシンプルな考え方で、子育てはグッと楽になり、子どもの個性や生きる力も育まれます」

 内田さん自身、「待ちよみ」という言葉を作る前から、そんな子育てを実践していた。

「私には息子が1人いますが、子育て広場を嫌がったり、電車を3時間近く見続けたり、いわゆる『育てやすい子』ではありませんでした。でも当時から、子どもには自ら育つ力があるから、私は息子が望むことにできる範囲で付き合えばいい、と思っていた。そのおかげで、まわりと比べて不安になることもなく、幸せな気持ちで子育てができました」

「待ちよみ」考案につながる出会いがあったのもこのころ。

「最初にできたママ友が、後に童話作家になるほど絵本が好きな人でした。彼女と本屋や絵本カフェなどに行ったおかげで、たくさんの絵本の魅力に触れることができました」

 一方、「待つ」ことの重要性に気づいたのは、別のママ友のひと言がきっかけだった。

「他院で手が負えなくなった異常分娩を扱う病院に勤めていたママ友がいます。彼女からすると、赤ちゃんは生まれて生きているだけで奇跡。これに私は心から共感していました。そんな彼女があるとき、私に『子どもをゆっくり待てているね』と声をかけてくれたんです。これが私にはとても響き、『待つ』ことの良さを意識するようになりました」