介護して気づいた毒母育ちの自分
ヘルパーやデイサービスを利用すると、スタッフに対してはいい顔をするが、娘たちには文句の嵐。
「あの人はダメ!と延々文句を言い続け、私はまるで愚痴を捨てるゴミ箱」
母親が認知症を発病すると、さらにエスカレート。
「罵倒されながら食事を作り、失禁したパンツを洗い、自宅へ帰ると山のような家事が待っている。体力とメンタルがもう限界で」
兄はノータッチの姿勢を貫き、鳥居さん姉妹は、母親の老人介護施設への入所を決めるのだが……。
「介護施設に入っても、何時にくるの? 今どこ? と電話の嵐。会いに行けば、つまらない人生だったと愚痴を言い、『だからあなたはダメなのよ』と文句の連続。介護してわかったんです。母は子どもを愛することよりも、自分が大好き。娘は自分が快適でいるために、感情をぶつける対象だったのだと」
介護をして、自分が毒母育ちだと再認識した鳥居さん。
「子どものころは『自分が至らないから怒られる』と思っていたんですが、私の善しあしは関係なかったんです。介護は親子関係の答え合わせをする時間だと思います。さらに自分が子どもに対し、母と同じことをしていることに気づいてゾッとしました」
毒母育ちは、母親に認めてもらいたい、という気持ちが強い。鳥居さんも感謝の言葉が欲しくて、意地で介護を続けたという。
「母が好きそうなお菓子を持っていっても、いつもぶすっとした顔。ありがとう、うれしいといった言葉は絶対言わない。ただ、干し芋を持っていったとき、ひと口食べてニヤっと笑ったのを見て、『やった!』と思いましたね」