「恩」と「怨」に揺れ動き延命治療に迷う
「これは私の考えですが、毒親の介護では2つの“おん”の間で気持ちが揺れるんです。親へ感謝の“恩”と、恨みの怨念の“怨”。恩と怨がシーソーのように揺れ動き、どちらかが大きいと反動も大きくなり、怨が爆発することも……」
毒母に悩まされた鳥居さんだが、医師に余命10日と宣告されたときは、延命治療をするか迷った。
「まるで私が死刑宣告してしまうようで怖かった。死ねと思っていたのに、いざボタンを押すとなると押せない。母は最後の最後まで私の意思を支配していたんです」
体力も気力も使い果たし、疲れているのに、悩んで眠れないという日々が続いた。
「最後は答え合わせの答えが出せないまま、不完全燃焼で終わりました。後悔はあるけれど、やりきったという充実感だけはありました」
鳥居さんによれば、毒母に育てられた娘の特徴は「例えば自分の子どもの学校のPTAの役員決めで立候補者がいないとき、いたたまれずに手をあげてしまう人。自分の時間が削られるのがわかっているのに、人のために生きる道を選んでしまうドM」だそう。
今だから笑いに変えられるが、渦中は冷静に分析などできなかった。
心理カウンセラーの守帰朋子さんは近年、毒親介護の相談が増えていると話す。
「つらさを誰にも理解されず、心が折れそうになった方からが多いですね。近々始まる介護を恐れた娘世代からの連絡も増えています」
自身も毒親の介護経験があり、それが役に立っている。
「毒親の言動は、病気が原因というより性格。鳥居さんのお母様のような女王様タイプの要求はエンドレスです。些細なことでパトカーを呼ぶ、『自殺する』と脅すなどの異様な行動も珍しくありません。もしかしたらパーソナリティー障害、愛着障害、発達障害などの可能性も。精神科医に相談なさってみてください」(守帰さん、以下同)