クラスターが発生も休業中の補償はない
「去年5月にワクチン接種の受け付けや問い合わせのコールセンターでクラスターが発生して、私も感染しました」
と当時を振り返るのは、飲食店関係者の理恵さん(仮名・37歳)。接客経験が生かされるOPの仕事を選んだ。
「ところがセンターでクラスター感染しても、そこに派遣された私には、登録した派遣会社から休業中の補償はありません。療養期間を過ごした後、別の案件に応募していた時に派遣会社から突然退職通知が届き、登録抹消されました。問い合わせたら、一定期間、派遣会社からの案件に就業していないと自動的に抹消されるのだそうです。驚きました」
前述の東さんも首をかしげる。「聞いたことがありません。スタッフを使い捨てと考える、派遣会社の上から目線の体質なのでしょう」
こうした“コロナバブル”に乗じた新規のセンターは管理体制に不備が多いが、老舗のコールセンターが万全かといえば必ずしもそうではない。老舗コールセンターで疲労困憊となったOP歴5年の里美さん(仮名・47歳)は、その実態を次のように語る。
「事業復活支援金申請のコールセンターで働いていたのですが、申請の不備に関する問い合わせが多く、相談者の中には怒鳴ったり、不満や文句など罵詈雑言を浴びせる人もいて、心が折れたOPが次々と辞めました。そんな状況を見た、あるSVは“相談者をバカと思え”と笑うんです。本当にありえない」
センターに対する不信感と仕事の重責で退職を願い出る電話をした里美さん。しかし退職の際は事務所に出向いて退職届を記入するように命じられ、そこで書かないと退職とみなされないと言われたという。
老舗が必ずしも働きやすいとはいえない。東さんは「老舗でも部署によりけりです。里美さんの場合は最悪のセンターでしたね」と同情しつつ、老舗や大手企業の問題点を指摘する。
「教育も管理体制もしっかりしている大手は、時給が安い。親会社が節約のために人件費を削っているからです」
OPを高時給で集めて使い捨てにするコロナ案件のセンター。コロナが感染症法上の2類から5類になれば、官公庁や自治体などのセンターはなくなるだろう。“コロナバブル”に踊らされ、スキルを鍛えられなかったOPたちに将来はあるのか。コロナ終息後の業界は不透明だ。
(取材・文/夏目かをる)