目次
Page 1
ー 「そのことは、親しくなったら告げます」
Page 2
ー 「突然母親と同居と言われても!」
Page 3
ー 「あんなところで働けない。仕事は辞めてきたわ」

 

 好きになった相手と交際に入ったばかりのころは、よく思われたいがために本来の自分を出さずにいるのは、誰しもあることだと思います。お見合いシーンでも然りで、仮交際から真剣交際に入ったり、成婚が決まったり、入籍したりとステージが変わった途端に、それまで隠していた秘密を打ち明けたり、性格が豹変したりする人たちがいます。今回は、そんなお話しです。

「そのことは、親しくなったら告げます」

 結婚相談所のプロフィールには、特定の宗教を信仰しているかどうかを記載する項目があります。最近は何かと新興宗教が社会問題になっているので、お相手選びをするときに信仰している宗教があるかないかを気にする人も多いのです。

 結婚相談所に入会する場合、独身証明書、身分証明書、収入証明書、学歴証明書(短大卒以上)、資格を有する職業の場合は資格証明書を提出していただいています。ただ、宗教に関しては、ご本人の自己申告となっています。

 さとえさん(41歳、仮名)は、宗教があるかないかのチェック欄には、 “なし”にマークを入れていました。そして、いくつかのお見合いをした後、とおるさん(45歳、仮名)と交際に入り、順調に関係を築いていました。

 ところがあるとき、とおるさんの相談室から、お怒りの電話がかかってきたのです。仲人さんは、言いました。

「そちらの女性様、宗教をなさっていますよね。プロフィールの宗教欄は、“なし”になっていますが、どういうことでしょうか。相談所のお見合いと安価のアプリが一線を画すのは、情報に偽りがないことが生命線ですよ」

 仲人さんの怒りは止まりませんでした。

「当該会員は、“真剣交際”に入りたいと考えていて、その打診をしたようです。そのときに、女性様が新興宗教を信仰している話をされたと言っていました。そもそもそこの信者さんだったら、お見合いもしませんでした。お見合いをしてこれまで交際してきた時間が、ウソをつかれていたことで全て無駄になってしまいました」

 さとえさんが新興宗教を信仰していると言うのは初耳でしたので、私もびっくりしてしまいました。電話を切って、急いでさとえさんに連絡を入れました。とおるさんの相談室から、宗教を信仰していたことを隠していたことでクレームが入ったことを告げると、「はい、その宗教を信仰しています」というのです。そこで、「プロフィールの宗教欄には、それを記載しましょう」というと、さとえさんは言いました。

「私が信仰している宗教は、間違った報道や風評によって、誤解されています。それを最初に出してしまうと、まずはお見合いが組めなくなる。お見合いからお付き合いに入って、私という人間を知ってもらったときに、私の口から宗教のことは告げるので、プロフィールはこのままでいいです」

 ただ、信仰している特定の宗教があるのに、そこを“なし”としておくのは、プロフィールの偽りになります。そのことを告げると、さとえさんは言いました。

「わかりました。では、退会させていただきます」

 こうして、辞めていかれました。大手結婚情報センターの中には、宗教の欄をそもそも設けていないところがあります。ただ私が属している協会は、その明記があるので偽りを入れておくわけにはいきません。

 信教の自由は、憲法でも謳われています。ですが、最初は隠しておいて親しくなったら告げるという考えはいかがなものでしょうか? 告げられた相手がどんな気持ちになるか、そこは相手の立場に立って考えたらわかることだと思うのです。