貧困シニアにならないために
年金は減り続け、保険料、医療費、そして今や電気、ガスなどのインフラまで上がり続けている。
「きっとこの先もこの傾向は続くでしょう。非正規雇用も働いている人の4割と高止まりの状況です」
だとしたら、私たちは貧困シニアにならないために、できることはないのだろうか。
「我慢して働き続ける、他者を頼らないというのが日本人の美学ですが、我慢強いのも善しあし。自分だけでなんとかしようとせず、使える制度は使っていくということが大事。
お金で絶望的になる人が多いのですが、お金がないというだけで生きていけないわけではないんです」
貧困で苦しんでいる人は自分の無力さ、ふがいなさのせいだと考えがちだが、こう言われると少しは気持ちがラクになる。
そして藤田さんは、年をとればとるほど、大事なのは人間関係だと力説する。
「自分でできることがあるとしたら、それは孤立しないことです。年をとるにつれ、友人・知人はどんどんいなくなっていく。それはつまり、助け合える関係がなくなっていくということ。
今からでも自分とは違う世代の人たちともつながり、若い人を含めて人間関係を構築していけば、それはやがて家族に匹敵する存在になるかもしれません」
人との付き合いをキープしていれば気力や体力の面でも衰えにくく、情報網があれば、それがそのままセーフティーネットにもなるだろう。
自分以外の誰かと関わるということは、社会とつながるということ。そのつながりを保つことが、貧困シニアの側に足を踏み入れないためのポイントなのかもしれない。
教えてくれたのは…
藤田孝典さん○社会福祉士。NPO法人ほっとプラス理事。反貧困ネットワーク埼玉代表。近著に『脱・下流老人』(NHK出版新書)がある。
取材・文/野沢恭恵