後輩の活躍と、ジョン&マキの未来

 不本意だった『ザ・ノンフィクション』への出演ではあったものの、マキさんの存在は思わぬところで話題になっていた。若き日に闊歩(かっぽ)した、新宿二丁目である。

「アタシは学生時代に『マキさんの老後』を見てから、その圧倒的なパーソナリティーに惹(ひ)かれて、マキさんのファンになったんです。もう放送後の二丁目は、いつもマキさんの話題で持ち切りだったんですよ!」

 そう語るのは、鈴木亮平、宮沢氷魚が恋人役を演じてヒットを記録している映画『エゴイスト』などにも出演する、今人気を集めるドラァグクイーンで歌手のドリアン・ロロブリジーダさんだ。ドリアンさんは早稲田大学の後輩でもある。

学生時代からマキさんのファンだというドリアン・ロロブリジーダさん 撮影/吉岡竜紀
学生時代からマキさんのファンだというドリアン・ロロブリジーダさん 撮影/吉岡竜紀
【写真】女装姿で通っていた大学時代。普段の授業、ゼミ、卒業式にも女装をしていた

「ぜひ一度お会いしたいなと思っていたんですけど、あるときマキさんが二丁目で出張ホステスをなさるという話を耳にして、会いに行ったんです。そこで話が盛り上がって、後日いろいろとやりとりするうちに、それなら二丁目でイベントをやってお呼びしよう、ということになったんですよ」

 ドリアンさんはドラァグクイーンと早稲田大学の先輩でもあるブルボンヌさんと一緒に『ザ・ノンフィクション マキさんと新宿二丁目』というイベントを企画、前橋から新宿のステージへマキさんを招聘(しょうへい)することとなった。

「壇上でお話を伺ったんですけど、マキさんのトークは凡人が想定するレベルをはるかに逸脱されて、百戦錬磨のブルボンヌさんでも手に余るほどでした(笑)。

 さらには早稲田の校歌『都の西北』を歌い出す始末で!でももう華やかだし、圧倒的なキャラクターなんですよね。早稲田の先輩であり、女装の先達でもある。なんだか不思議な縁のある方ですね。開拓者として尊敬もするし、お姿を見たり、お会いしたりすると元気になる大好きな方だけど……バイタリティーがすごいので、ずーっと一緒にいると疲れて、大変な方かな、なんて思います(笑)」

 マキさんは『ドリアンくん』『ブルボンヌさん』と呼び、後輩としてとても可愛がっている。

「ドリアンくんはすっぴんのときに初めて会ったから“くん”で、ブルボンヌさんは女装のときに会ったから“さん”なの。ドリアンくんは芸術家肌、ブルボンヌさんは学者肌ね。いつだったか、ジョンから『彼らのこと、羨(うらや)ましくないの?嫉妬心はないの?』と言われたんだけど、それはないんですよ。アタシたち世代では果たせなかった夢を彼らが実現して脚光を浴びているのは、田舎住まいの老齢の女装には、まるでわがことのようにうれしいんです。

 ブルボンヌさんはアタシより干支(えと)ひと回りくらい下、ドリアンくんはさらにブルボンヌさんのそのまたひと回りくらい下なので、まるで弟や甥(おい)っ子が活躍するような気持ちなんですよ。もちろんアタシも若いころから中年くらいまではチヤホヤされたり、テレビに出演したりして、とびっきりのおしゃれをしましたけど……アタシの時代では、まだ早すぎたんでしょうね」

早稲田大学の後輩でもあるドリアン・ロロブリジーダさん(左)とブルボンヌさん(右)の活躍をマキさんはうれしく思っているという
早稲田大学の後輩でもあるドリアン・ロロブリジーダさん(左)とブルボンヌさん(右)の活躍をマキさんはうれしく思っているという

 マキさんはそんな後輩たちに「ちょっとお願いしたいことがある」と言う。

「アタシが結婚したことで家族の許しが出て、ふたりで宮本家のお墓に入れるようになったんです。それでジョンとアタシが一緒に入るお墓は、もうどんなデザインにするかも決めているんですよ。“John&Maki”と英語で名前を入れてね。墓石は藤紫色にして、形は蓮の花がいいね、なんて。生前に除幕式とかやってね、皆さんをお呼びしたいな、と思っていて。

 それで、お墓のすぐ近くには美味しいお魚が食べられる『那珂湊おさかな市場』があるんですよ。だからそこへドリアンくんやブルボンヌさんが遊びに行ったりしたら、帰りに『ジョンとマキのお墓に行ってみようか』って言ってもらえたらいいなって。それでお線香を供えてもらったらね、その煙がジョンとマキの形になってお礼をするから、それを写真に撮ってSNSに載せてもらったり、『ご利益があるのかも?』と話題になったりしたらいいな、なんて夢も見てるんですよ。

 死ぬまでにそのくらい有名になって、観光地になってくれたらいいよね、なんてジョンと話しているんです」

 来年はマキさんとジョンさんが結婚して、ちょうど30年の節目の年を迎える。

マキさん・宮本昌樹さん 撮影/吉岡竜紀
マキさん・宮本昌樹さん 撮影/吉岡竜紀

「ジョンとふたり、老いは感じてますけど、この先まだまだ生きると思うんですよ(笑)。だからアンチエイジングもちゃんとやってね、いつまでも若くいて、人生最後の花火を打ち上げたいんです。

 来年の結婚30周年は、ジョンが最初に就職した高輪のプリンスホテルで、ゲストを呼んでイベントをやって、華やかにお祝いしたいんですよね。だから今年はアタシもジョンも仕事をバリバリやって、お金を稼ぎたいんです!ですので、ステージのお仕事も全国からお声がかかればいいな、なんて思っていて。もしアタシのショーをご覧になりたいという方がいらしたら、あなたの街までこのマキが参りますので、ぜひお声がけくださいね!」

●ブログ「ジョン&マキ♡公式ブログ」https://ameblo.jp/john-maki/

●HP「ジョン&マキ倶楽部」http://www5e.biglobe.ne.jp/~johnmaki/

●「【公式YouTube】ジョン&マキちゃんねる」https://www.youtube.com/channel/UC_bpW3DacQv4twhUx4H-sQQ

〈取材・文/成田 全〉

 なりた・たもつ 1971年生まれ。イベント制作、雑誌編集、漫画編集などを経てフリー。幅広い分野を横断する知識をもとに、インタビューや書評を中心に執筆。「おしんナイト」実行委員。